act3 かつての手下たちを下して、地位を固める

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「社長、私も高校の時は若気の至りで、少々はっちゃけていたかもしれませんが、若い時は誰もがはっちゃけるものですもの。社長もそうだったのでしょ?私も今は、良い社会人です。真面目に働いております。彼女たちもです。これからはお互い、我が社の職員ですから、仲良くしませんとね」 「う、うむ、そうだ、沢島君の言った通り、お互い大事にし合わないとな。皆、会社の社員は家族。同じ会社の社員。仲良くしなさい」  やはり、大人しい社長は、私の言った通りに動いた。 「は・・・はい」  言われた元手下たちは、急にしゅんとなった。  思った通り、言ったが勝ち。 「たく、いじめかよ」 「ちっ、面倒だな。社長の言う通りだ、社内で揉め事を起こすなよ」  その後、専務と人事部長も続いて、けげんな顔をして通り過ぎ、元手下たちは何も言えず、黙って通り過ぎるのを待った。  社長、専務、人事部部長と続いて睨まれたら、元手下どもはぐうの音も出ない。 「ほら、社長がああ言ってるのに、仲良くしないと、査定に響くわよ」 「なっ・・・」  最後にトドメの一撃。これで、もう二度と、浮上して来ないだろう。  手下たちは泣きそうな顔をしていて、もう、それ以上、争う気はなさそうだった。査定とか、給料、立場に響くことが、社員の泣き所となる。それを突かれたら、もはや黙るしかない。  私はこれ幸いに、社長の巡回の後について、その場を去った。 (やった。これで、しばらくあいつら、大人しいでしょうね。特にもう、会社内では私に絡んで来ないはず)  社内の問題、片付け、完了。 「社長、もっとしっかり言ってくださいよ。だから、会社買収なんて言われるんですよ」 「う、うむ」 「こ、これ、沢島君、社長だぞ」 「いいんだ、同じ社内の者同士、仲良くが基本だ。沢島君がそれを率先してくれるなら、支持すべきだ、沢島君は入って早々、不正も見つけてくれた。有能社員だよ。それに、我が社を心配して言ってくれてるんだろう。そのように直言を怖れず、親身になって言ってくれる社員は貴重だ。叱らないで聞いておきなさい」 「は、はあ」 「やっぱり社長、優しいから、好きです」  機嫌を良くした私は、社長をばんばんと叩く。 「こ、これ、君」 「いいんだ」  周りが私の勢いに飲まれていたけど、社長は気にしてなかった。 「もっと噛みついてやればいいんですよ。我が社に損を与える人間や会社なんて」 「う。う、む、そうだな。沢島君は面白い子だ。これから頼りにしているよ」  社長は戸惑いながらむせていたが、それでも笑顔でにこにこだ。  私、分かっていたわ。社長って誰にとってもフランクなの。でも周りが気を使って言わない。それを残念に思っている。でも優しくて大人しい社長だから、それも黙っているだけ。だから、こうしたら喜ぶって。  そういうところ、やっぱり社長だ。それに、私のことも大らかに理解してくれる。ただ大人しいだけでない、こう見えて、懐深いのだ。  私はこの社長に恩返しをしたいわ。高校から死に物狂いで大学を出てから、私を最初に受け入れてくれたの、この会社の社長だもの。 (ぜったい、この社長、良い人、私、この恩義、返すわ。いいえ、必ず晴らしてやろうほどに、待ってなさい)  と決意した。恨みでもないけど、恨み晴らすぐらい思った。  だって、この恩義をちゃんと晴らしたいもの、私は。
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