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「よく相手を調べ、タイミング良く、相手を下す。さすが」
ぱん、ぱん、ぱん、と手を叩いて、階段の廊下の影から出て来た人物がいる。
髪を後ろに流し、灰色のスーツを着た若い男性だ。社長の孫の城市茂次郎。今さっき、社長の顔を見たから分かる。半分ぐらい似てる。
何を言いたいのか。社長の孫が。今のシーンを見られたなら、また昔のように私をあざ笑うだけかもしれない。
「何のことですか」
すべては済んだから、私は素知らぬふりをし、去ろうとした。けど、階段を移動するには、前を横切るしかない。
「人間もいろいろいる。会社の中だと、さらにいろいろな感情や思惑が絡む。しかし、君だけに複雑なことを抱えさせる。会社としては受け皿としては、それも君に悪い。何か困ったことがあったら、僕に相談すると良い。一人で抱えるより、応援する者にも任せると、楽になる」
「急ぎますので」
城市茂次郎の言うことは意味が分からない。私を手なづけ、私を支配し、良いようにこき使う気かも。そうはいかない。
この私を誰だと思ってるの?超絶孤高の時代を生き抜いた、ピンのジャー島なの。愛人にして手なづけるなんて、ない、ない、ナッシング。
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