act4-1 かつてのアイドル女子を下す、が下さず

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「そうね、下すけど、下さないってのは、運を上へ向かせてる」 「そう?」  道端の占い師に占ってもらったら、占い師は大きな虫メガネで手相を見て占ってくれた。  占い師は、私がよく仕事帰りに利用するショッピングセンターの道で店を開いていて、私と顔見知りになり、何かとアドバイスをしてくれる。 「うん、下そうとしたのに、下さなかったってのは、良かった。運気が上がってる。悪い運気に触れなかったから。とにかく悪いゲンの悪いものには触れないほうがいい」  確かにそうだけど、勝手に出て来てしまうというか、今は。私だって、何度忘れようと思ったか。  私も占いなんてと信じぬほうだったけど、年も近いこともあり、私も気軽に会話が出来て、いつの間にか良き相談相手になった。 「アイドル女子、そんなの気にしないで良いのじゃないの?」 「でも、気になるわ、根っからの敵なのに」 「そんなの放っておきなさいよ。過去の亀裂など、ゲンが悪いったら。運気が心気臭いところには臭いものしかないの。昔のものを持ち出しては損よ。それより、仕事運や健康運を上げる時ね、今。何か、あんたの線てぐねぐねして、見たことがない線してるのよね。運気が乱高下する妙な線、何度見ても、変わった手相してるね」 「そう、ありがと」 「誉めてないけど、そのバイタリティは必要」 「で、私はやっぱり、金持ちと結婚するの?」 「まあ、そうね、あんた、金持ちなんでしょ?同類のタイプと出てるから、たぶんね」  どきりとしたのは、相手を思い浮かべたから。まさか・・・ 「ううーん、それより、あんた、気をつけなさい」 「うん?」 「今は分からないけど、あなたの人生を大きく変える、そんな出来事が起こるわ、特に上、上からのものに注意なさい」 「上?って何?」 「分からないけど、大きな転機になるし、もしかしたら命に関わるかもしれない」 「ええっ・・・げ、何があるっての?」  野天の占い台の上空なんか、青空しかない。  空虚な空間、ただの青空を見て、私は意味が分からないまま、いつの間にかそのことは忘れた。
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