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「まったく、くそいまいましい」
部署に戻って、私は書類を机に叩きつけた、かもしれない。
「お、おい。沢島、荒れてんなあ。どうした?三時のおやつ、食いっぱぐれたか?」
「どうもこうもありませんよ。どいつもこいつも、書類の不備ばっかりで」
何度来ても、俺の気持ちは変わらないから・・・
(くっそ)
高校を卒業しても、なんで、あの伊藤エリカの顔を見なきゃならないのよ。
「あー、また、営業課の下川さん、記入箇所、書き入れてない。ハンコも押してない」
ちょうど、書類を持って来た、地味な営業社員に私は思いっきり文句を言った。
「あ、ごめん、忘れてた」
「忘れてたって、何度目ですか。何度も何度も、忘れていたら、忘れていたっていいますか?この書類、月末越したら、申請が翌月扱いになるんで、困ったことになるんですよ?」
「あ、ああ、ごめん。おお、こわ。今日、やり直して持ってくるから。勘弁してくれよな?」
忘れっぽい営業の中年男性に注意していたら、周りがまあまあ、と慰めてくれた。
「ちょっとどうした、沢島さん。そんなに怒って、妙に、噛みついてるわね」
「ええ、すいません。怒っているわけではないんです。こういう性格です」
「沢島さんに怒られるなんて、あの人らが悪いんですよ。何度言っても必要な書類持って来なくて。沢島さんはいつも丁寧に言ってますよ。沢島さんは悪くない。忘れる、あの人らが悪いです」
「ありがとう、梅香さん」
私の今の部署の上司である佐々木係長は、男顔負けのしっかりした中年女性で、オシャレもセンスがあって、美魔女。私らの若手の中ではセンス係長でこっそり慕われている。
私の同僚で富山梅香は、年も近いぽっちゃり系の事務員。
ハゲ頭の部長は、河田部長。子だくさんの疲れた中年おじさんだが、仕事ははっきりと言う人で、厳しい一方、誰からも信頼されている。
この部署の職員には、最初、何が来た?という目で見られたけど、共に働くうちに打ち解けて、全員、私を頼りにしてくれるし、信頼してくれて、親切にしてくれる。
それは私が、少々変り者であったとしても、毎日朝から夜まで真面目に勤務する姿を見せているからだろう。そして誰よりも優秀で、皆を率いているから、頼りにされているのだ。さすが、私。
この他が問題。とくに私の高校時代の同級生が全員。
まったく、どいつもこいつも。
この、この、この。
とデータをパソコンで打ち込む。私だって社会人。人に当たり散らし、噛みつき、怒り散らしたら、逆に足元すくわれるのを知ってる。
だから、会社での私の噛みつきは、主にパソコン相手だ。
かつては噛みつき犬と呼ばれた私も、今では噛みつくのはパソコン。
寂しいような、悲しいような・・・
私を誰だと思って?この超お金持ちの沢島小夜子と知ってのこと?
(昔はあれだけのことがよく言えたものだでも、今だって、あの女に・・・・)
この、このこの、この野郎。
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