act4-1 かつてのアイドル女子を下す、が下さず

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「まったく、くそいまいましい」  部署に戻って、私は書類を机に叩きつけた、かもしれない。 「お、おい。沢島、荒れてんなあ。どうした?三時のおやつ、食いっぱぐれたか?」 「どうもこうもありませんよ。どいつもこいつも、書類の不備ばっかりで」  何度来ても、俺の気持ちは変わらないから・・・ (くっそ)   高校を卒業しても、なんで、あの伊藤エリカの顔を見なきゃならないのよ。 「あー、また、営業課の下川さん、記入箇所、書き入れてない。ハンコも押してない」  ちょうど、書類を持って来た、地味な営業社員に私は思いっきり文句を言った。 「あ、ごめん、忘れてた」 「忘れてたって、何度目ですか。何度も何度も、忘れていたら、忘れていたっていいますか?この書類、月末越したら、申請が翌月扱いになるんで、困ったことになるんですよ?」 「あ、ああ、ごめん。おお、こわ。今日、やり直して持ってくるから。勘弁してくれよな?」  忘れっぽい営業の中年男性に注意していたら、周りがまあまあ、と慰めてくれた。 「ちょっとどうした、沢島さん。そんなに怒って、妙に、噛みついてるわね」 「ええ、すいません。怒っているわけではないんです。こういう性格です」 「沢島さんに怒られるなんて、あの人らが悪いんですよ。何度言っても必要な書類持って来なくて。沢島さんはいつも丁寧に言ってますよ。沢島さんは悪くない。忘れる、あの人らが悪いです」 「ありがとう、梅香さん」  私の今の部署の上司である佐々木係長は、男顔負けのしっかりした中年女性で、オシャレもセンスがあって、美魔女。私らの若手の中ではセンス係長でこっそり慕われている。  私の同僚で富山梅香は、年も近いぽっちゃり系の事務員。  ハゲ頭の部長は、河田部長。子だくさんの疲れた中年おじさんだが、仕事ははっきりと言う人で、厳しい一方、誰からも信頼されている。  この部署の職員には、最初、何が来た?という目で見られたけど、共に働くうちに打ち解けて、全員、私を頼りにしてくれるし、信頼してくれて、親切にしてくれる。  それは私が、少々変り者であったとしても、毎日朝から夜まで真面目に勤務する姿を見せているからだろう。そして誰よりも優秀で、皆を率いているから、頼りにされているのだ。さすが、私。  この他が問題。とくに私の高校時代の同級生が全員。  まったく、どいつもこいつも。  この、この、この。  とデータをパソコンで打ち込む。私だって社会人。人に当たり散らし、噛みつき、怒り散らしたら、逆に足元すくわれるのを知ってる。  だから、会社での私の噛みつきは、主にパソコン相手だ。  かつては噛みつき犬と呼ばれた私も、今では噛みつくのはパソコン。  寂しいような、悲しいような・・・  私を誰だと思って?この超お金持ちの沢島小夜子と知ってのこと? (昔はあれだけのことがよく言えたものだでも、今だって、あの女に・・・・)  この、このこの、この野郎。
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