act4-2 アイドル女子にふたたび、戦いを挑む

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「久しぶりだね、君とは案外、顔を合わせないものだから、どうしてるのかなって思ってた」  彼はなんだか嬉し気にほくほくと私の書類を見て、言う。 「僕もいきなり、統括だなんて、父に無理だと言ったんだけど、兄貴も最初はそうだったと言うから、仕方なく。でも、まあ、各部署のしっかりした部長がいるから、僕なんていなくても、ちゃんとやってくれているから、安心だ」  それに聞いてもないのに、べらべらと己のことを喋り出した。  私が高校の頃、大勢の前で、見事に竹内涼に振られたのを笑って噂したはずなのに、いい気なものだ。むしろ、ジャー島だった私が見事に振られたところを見たので、せいせいしたか? 「ええと、総務部だったよね?企画部に趣旨替えでも?」  ここでつまづいては、会社がつまづく。  私もこれしきの動揺で、足を止める女ではない。  私のかつての噛みつき犬の力を発揮して、私は強固に持論を展開した。 「常日頃、私も会社に勤めるうちに、我が社の製品の新アイディアは持っていました。こう見えて、私、発想には自信があるので。子供の時は塗り絵が得意で、母からもデザインの道を進められたりしました。うちの製品は、ボウルからグラタン皿まで、ご家庭で広く使われているので、それをちょっと変えて、使いやすくしたらどうかと思って、デザインを描いてみたのです。ちょうど、うまいアイディアが、ひらめいたので」 「確かに、うちは家庭用品が主だが、デザインは古くなっていくので、新しい商品企画は常に募集している。新しい発想は大歓迎だ。企画部長や社長へなどけっこうアットホームな会社なので、思いついたら言うことは推奨している。こういう行動は、会社としても有難い。君のやっていることは男気があるって言うか、何て言うか、勇気があって、とても良いと思うな。些細なことでも、一つのアイディアでも良い。むしろ、会社のためを思ってしてくれる君のような行動は誉められるべき。僕は評価する」  学生時代、彼は私を笑う一人だっただろうけど、今はもう、会社の上司だ。言うことも違う。昔の因縁を言ったところで、損。  だから、私は構わず、付け加えて、説明した。この取手の部分がどうだのとか、透明度がどうだの。  製造部や企画部を束ねる統括だ。企画部長より、彼のほうが役職が上。それに同級生で話しやすい。この会社の親族で、強烈なコネでもある。私の斬新なアイディアさえあれば、彼に話を通したら、通しやすい。 「だが、この書類はボツだな」  え・・・?  私が衝撃を受けている前で、彼は私のA4用紙をびりびりと破いた。 (わ、私のアイディアが・・・!)
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