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「どうして、私のためなんか」
きっと笑ったのだ。また、見事に振られるのに、犬みたいに付きまとっているって。これも私が高校時代あちこち噛みついたから、迷惑に思ったのだ。だから、これも、彼の逆襲なのだ。
もう涙が出て、言葉が声にならない。
「どうしてか?高校の時、野球でケガして続けられない僕に、君は好きなら、諦めるなと言ってくれた。それから、言葉通り、君は見事な諦めなさだった。あの頃から君の事、僕は尊敬していた。負けても立ち上がって、追い払われても向かっていって、何度も何度も立ち上がる君のことを僕は見ていた。いったん離れたけど、この会社で出会って、また立ち上がる君を見て、君のことにまた、惹かれた。・・そう、この気持ちはそう言うのが正しい。僕は君に惚れた。君のその強気さにすごく惹かれている」
私のことを・・・?
そんなまさか、私はジャー島犬なのに。
信じられない。私のことを、城市はじっと見つめ、私の頬にそっと手をあてる。
「君の強さが僕を元気づける。もういいじゃないか。昔のことは。君なら、他に成し遂げることがあるはずだ。昔の君なら、いや、今の君でも、君にならもっと他にやり遂げることがあるはずだ。君ももっと、他に目的を持ったらどうだ?僕もこれからもっと、野球以外の違う目標を持ちたい。それを、僕と共に・・・君となら、僕は出来る気がする、だから、君にあのボールももらって欲しかったんだ」
あ、そうか。
この人、うむ社長の孫だから、大人しい気性がそのままなんだ。
それで、私に勇気?づけられる?のかしら?
でも、それこそ、自分でやりなさいよ。そんなこと・・・
「でも、あなた、伊藤エリカの取り巻きで、伊藤エリカのことを好きだったんじゃないの?」
「違う」
「伊藤エリカと竹内涼を囲んで、いっしょに私のこと笑っていたんじゃないの?」
「野球ばっかりしてたのに、何も見てないよ」
嘘・・・
笑ってた。
伊藤エリカのことも好きで・・・
「この嘘つき」
私は思いっきり、その男の頬をひっぱたいた。嘘をついて、相手を騙し、私を愛人にでもする気なのだろう、社会に出たら、社長なんか、愛人を抱えているって言うし、若いとは言え、社長の孫だって何をするか。年取ってから愛人ってのはよくあるけど、だったら、その中年社長が若い時から愛人いなかったか?と言うと、いたに決まっている。
こいつも、あちこち手を出して、若い時から仕込むかもしれないから、気をつけなきゃ。
社長の孫なんて、お断りよ、この私を誰だと思って?愛人になる沢島小夜子ではない、愛人になどされてたまるか。
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