act5 会社を倒そうとする噛みつき犬へ、噛みついて、撃退する

4/4

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
 階上に人影がさっと消えた。大勢、見に来たのに、さっと隠れるその姿を私は見逃さなかった。  これを機に、越前谷(えちぜんや)は姿を消した。新人研修会で、私のことをそれほどまで・・・?  横領した小松谷(こまつや)と共に横領した疑いがあった。でも、新入社員のあの時は、私はそこまで証拠が握れなくて、追い出せなかった。  だから、私もいつか、あの件で不正を暴いてやろうと思っていたのだ。しかし、相手も感づいていて、私が何かしでかすか、監視していたに違いない。最後に、いわば本当に、亡き者にする気だったかもしれない。  人の恨みは怖い。まっとうな怒りもあろう。許されないという尺度は人それぞれ。  私のような、周りに食ってかかる吠え付き犬の怒りとは、まるで違ったものだ。分からない。分からない。理解を超える。  私は町を放浪した。歩いて、歩いて。  でも、歩き回って、力尽きるまで、何か正しい解答には至らなかった。  うおおおお・・・・  高層ビルの中で、私は吠えた。  世の中の無情。己が理解出来ないこと。  気持ちのやり場がないこと。  泣いていたかもしれない。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加