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しかし、強大な敵の魔の攻撃は、さらに続いた。
安達製造会社、新製品発表を兼ねた事業報告会。
そこでは多くの資金源となる関係先や銀行、投資家たちのほか、関連会社の社員らが集まり、いかに安達社長の威光があるかを見せる場でもあった。
うちとは比べものにならない規模の話を、大勢の部下らの前で並べ立てられ、大人しい社長はただただ、息を飲む。
何倍、いえ、何百倍違う世界に、その息子、そのまた息子の城市茂次郎、その兄弟までもが、うむうむ、うーんと唸るだけの同じ反応だった。
「というわけで、我が社がこれだけ羽ばたくことが出来る会社なのです。これほどの事業を展開できるのはうちの強みです。我が社とつながりがある会社はそれゆえ、共に発展出来るでしょう」
大勢の前で、大勢の有名企業らの名前を出され、我が社の社員はただただ、うなづくばかり。
我が社の碁盤の目は、私らが白、相手やその周りは黒になり、取り囲まれた。
(あの女の好きにはさせない)
我が、城市社長の会社が、のっとられる。
誰がこの女の思うままにさせるものか。
このジャー島犬。戦いは知っている。学園一のアイドル女子と戦ったのが、この私。
どれほどの強敵に向かってきたか。こき下ろしても、エヘペロと立ち上がる。ドジばかりしても、一生懸命さで乗り越え、恋人をつなぎ止める。
その艱難辛苦の戦いを、命からがら潜り抜け、生き残って来たのだ。
どんなに勝てない敵が現れても、次々また、新しい敵がどんなに現れても、私はあの戦いの日々を越えた戦士。
戦う。どこでも、いつでも。
その戦いの日々は私の運命。戦うのが私の使命。
私こそが、戦士。
私を救ってくれた恩人。
その人と会社を意のままにしようとする強敵。
そのために戦う。
けれど、これほど凄まじい敵には遭ったことがない。
エヘペロとも違う。人事の資金横領の手下とも違う。
社会に出て、海千山千で鍛え上げられた獰猛な獣、いえ、ケダモノ。
この化け物め。
「そんなことはないと思います」
ざわ。
相手にとって、不足はない。
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