act2-1 入って早々、キワモノ女上司を下して出世する

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act2-1 入って早々、キワモノ女上司を下して出世する

 大学卒業して、ようやく新しい人生の幕開けとなった。  でも、最初に出会った人は、かつての敵と、私に知る以上の強敵、厳しい上司だった。 「私に逆らう奴は、人事にそれ相応の話をするつもりだから。この新人教育係をなめるんじゃないよ。従わない奴は嫌いよ。次、礼。ほら、礼がなってない、もっと頭を下げて。私を誰だと思ってるの?」  その新人教育係は、厳しくて有名な人だった。  定規を手に持ち、気に入らないことをすると、バンバンと机を叩く。  似てる。同じだ・・・  まるで前の私と同じ。 「小松屋(こまつや)さん、なんで新人をあれだけいびるんですか?」 「そんなの決まってるでしょ。新人をいたぶって右往左往させた姿を見れたら面白いからに決まってる」 「なのに、なんで、新人教育係に立候補したんですか?小松屋さん」 「賢い奴が出て来て、私より出世したら嫌だからよ、最初に私の怖さを思い切り教えてやるの」 「小松屋さん、悪いですねえ」 「あなただって・・・ね?越前谷(えちぜんや)さん」  いや、私と同じではない。単なるイジメ上司だ。 「なっ・・・何を、沢島。この新人教育係に向かって、そんな口をきいて良いと思っているの?」  私は噛みつき犬として、ジャー島と呼ばれた女。  所詮、血塗られた道。  何度でも、何度でも、同じことを繰り返すわ。それでも構わない。私に与えられた試練なら、私の運命だもの。何度だって立ち上がって見せるわ。何度だって、何度だって言うわ。私は沢島小夜子。この私をいったい誰と思って? 「ごまかしたって無駄。現金支払いの中からお金を抜いて、銀行に貯金していたの、私、見たんだから。最近、経理で帳簿の金が合わないって問題になっていましたが、毎月の提出分に大量のニセの領収証も入れてたんですね。毎月何万と、大した金額になりますよ。これは横領ですよ」  お、おい、沢島さん、そんなこと言って大丈夫か?本当か?  頭おかしいんじゃね、こいつ?  そういう声が各所から漏れた。  ざわざわ。奇異な目で見る大勢の見守る中、新人教育係の女は、人事部の役員に呼ばれた。  その後、彼女はすぐに退職した。しかし、それは長年勤める旧情があったゆえ、事件は穏便に処せられ、自主退職ということで済ませたらしい。 「沢島、君は総務部に配属だ」  そうして、私は新人教育係を下し、正社員として雇われることが決まった。
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