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あまりに腹が立つから、ソーダを一気飲み。
くそ生意気な。何の努力もしないで、可愛く取り繕えるって。
「あなたぐらいの家なら、ドレスなんて用意するのがやっとじゃない?」
思わず黙っていられなくなって、廊下で通り際、あの偽善笑顔女に声をかけた。
私の家はけっこうなお金持ちだ。私は今、月給でささやかな暮らしだが、家にはドレスがわんさとある。
「おいおい、また沢島かよ」
「高校の時と同じだ」
社内では、また陰口を聞く者がひそひそ。
でも、己を可愛いと思って、図に乗る女をこのまま調子乗らせるなんて、会社へ、世界への冒涜だ。この女止めないと。
「当日、私が着飾って来るドレスと比べて、あなたがどれほどのものか、見せてもらおうじゃない」
「ねえ、あの人って、沢島さんだっけ?」
その後、あのかわい子ぶりっ子が可愛い顔して、怖ろしい呪いの文句を言い続けていたけど、私は相手にしなかった。
「ねえ、伊藤さんはどういうのを着ていくの?」
「ええ、私、私なんて、貧乏だし、家にあるのは何もないから、あるやつしかないですよ。でも、竹内君に可愛く着飾った姿を見てもらいたいから、今のドレスをリメイクして、ちょっと大胆に胸開けて、赤のドレスとかにしてみようかな、なんて。ドジだから、すぐ針が指に刺さっちゃうんだけどね、エヘ」
部署で、同僚との会話を聞いて、私は頷いた。
ほーらやっぱり。私より、誰よりも着飾って、可愛くして、目立とうという魂胆よ。それも赤なんて、あいつ、魔性の女ね。やっぱり。
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