act8 パーティでアイドル女子を超えて、ヒロインになる

5/6

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
 あー、なんだかなあ。かったるい。  嬉しいはずだったのに、なぜ、こんなにつまらない気分なの?  あの女に勝った。それに、ちっともやった感がないわ。  大勢の前で褒め称えられても、何ら沸き上がって来る感情もないし、嬉しくもない。  なぜかしら・・・?  これは、多分、愛する人からの愛が無いからでないかしら。竹内涼が私のことを愛してくれたら報われるのでないかしら。  あの女は、それにしても・・・どうなっただろう?私ほどではないとしても、赤のドレスでえげつなく振舞った。だから、また部署でも評判が良いらしい。 「おおい、沢島、これ、今月まで仕上げて」 「はい」 「頼むよ」  何なの、このだるさ。  私はずっと独りだった。一人で、孤独に戦って来た。けど、今は厳しいけど、信頼して仕事を任せてくれる部署もあるし、上司や同僚も先輩もいる。 「君の人生は君のもの。君がここにいるのは、君のため」  ああ、なんでだろう。あいつの言葉が今蘇るなんて。   今、あいつがまた一生懸命さを発揮して、アイドル風を吹かせているけど、私にも、仲間もいる。好きな人も・・・?  私だってあの女と変わらないのでは?  別に目くじら立てて争わなくても、この私などが目をくれるほどの相手かしら?  でも・・・竹内涼は、私に振り向きもせず・・・  私は竹内涼のことを何でも知ってる、私のほうが先に好きになったんだからね。あなたは近寄らないで、お邪魔虫なのよ、あなた。  ご、ごめんなさい・・・そんなつもりは・・・  おい、やめろよ、沢島。いくぞ、伊藤。  え?私?  伊藤エリカ、お前意外に伊藤エリカがどこにいるんだよ。 (そんな・・・涼)  そんなはずは・・・・私が置いて行かれるはずは・・・・  どうして、あの子なの?あの子、失敗やドジばかりじゃない。私のほうがぜんぜんマシじゃない。  あの頃のことが、このところ、何度も思い出されて、いまいましいったらありゃしない。 (くっそ)   どん。  過去のことを思い出して通路を歩いていたら、誰かとぶつかった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加