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あー、なんだかなあ。かったるい。
嬉しいはずだったのに、なぜ、こんなにつまらない気分なの?
あの女に勝った。それに、ちっともやった感がないわ。
大勢の前で褒め称えられても、何ら沸き上がって来る感情もないし、嬉しくもない。
なぜかしら・・・?
これは、多分、愛する人からの愛が無いからでないかしら。竹内涼が私のことを愛してくれたら報われるのでないかしら。
あの女は、それにしても・・・どうなっただろう?私ほどではないとしても、赤のドレスでえげつなく振舞った。だから、また部署でも評判が良いらしい。
「おおい、沢島、これ、今月まで仕上げて」
「はい」
「頼むよ」
何なの、このだるさ。
私はずっと独りだった。一人で、孤独に戦って来た。けど、今は厳しいけど、信頼して仕事を任せてくれる部署もあるし、上司や同僚も先輩もいる。
「君の人生は君のもの。君がここにいるのは、君のため」
ああ、なんでだろう。あいつの言葉が今蘇るなんて。
今、あいつがまた一生懸命さを発揮して、アイドル風を吹かせているけど、私にも、仲間もいる。好きな人も・・・?
私だってあの女と変わらないのでは?
別に目くじら立てて争わなくても、この私などが目をくれるほどの相手かしら?
でも・・・竹内涼は、私に振り向きもせず・・・
私は竹内涼のことを何でも知ってる、私のほうが先に好きになったんだからね。あなたは近寄らないで、お邪魔虫なのよ、あなた。
ご、ごめんなさい・・・そんなつもりは・・・
おい、やめろよ、沢島。いくぞ、伊藤。
え?私?
伊藤エリカ、お前意外に伊藤エリカがどこにいるんだよ。
(そんな・・・涼)
そんなはずは・・・・私が置いて行かれるはずは・・・・
どうして、あの子なの?あの子、失敗やドジばかりじゃない。私のほうがぜんぜんマシじゃない。
あの頃のことが、このところ、何度も思い出されて、いまいましいったらありゃしない。
(くっそ)
どん。
過去のことを思い出して通路を歩いていたら、誰かとぶつかった。
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