act9-1 アイドル女子一生懸命頑張る、頑張って、頑張り切ってエヘペロ

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act9-1 アイドル女子一生懸命頑張る、頑張って、頑張り切ってエヘペロ

 企画部が出した新デザインの起案に、伊藤エリカは張り切り出した。  やれやれ・・・  高校時代と別れを告げて、新しく社会人人生をやり直そうと思っていたのに、いったい何なの、次から次に。  あのアイドル女子が私の会社の中で、同僚と楽しく会話しているなんて・・・  目の前では惨劇か、ホラー映画が展開しているみたい。  同じ階では、伊藤エリカと竹内涼が働いていて、下の階にはかつてのクラスメイトたちがいて、まだ伊藤エリカと竹内涼をちやほやしてる。 「へえ、エリカは一生懸命に取り組むから、部長もそれを見ているのよ」 「そうかな?私、ドジでそそっかしいから、一生懸命取り組むことしか出来なくって、でも、製品アイディアを出すのは頑張ってみる」 「エリカなら出来るよ。涼もエリカのことを応援してるんだし」 「うん、それはしてくれるけど、でも、仕事は自分で頑張るものだし」  同じだ。まるで昔の再現だ。ううん。今もまた、昔。  それにしても。  伊藤エリカは、どうやら企画を通らせようと、まだ頑張っているらしい。 (あんなにいい子ぶっている奴に、製品づくりなんて)  この会社は一代から築き上げた会社で、妙な製品など出そうものなら、経営に関わる。それはこの会社にいる私にも関わることで、一大事だ。あんな偽善者のすることなんて、まかり通る世の中であってはならないわ。 (あいつが出て来るのは阻止しないと)  私は心底、憤慨した。  でも、あのエヘペロ笑顔と、ドジでそそっかしいからという言い訳で、こけてよろめいて、失敗をしているうちに、なぜが通ってしまうのだ。周りが、ちやほやし出して、なぜか成功していく。  あの可愛い笑顔と、頑張っている一生懸命さのフリに、皆、騙される。
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