act9-1 アイドル女子一生懸命頑張る、頑張って、頑張り切ってエヘペロ

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(なんという事態だ。これは何としても、阻止せねばならない)  あいつに活躍など、されてたまるものか。 「ねーえ、伊藤さん、まだ帰らないの?」 「うん、もう少し」  単なる耐熱ガラス容器のデザインだが、どこをどう変えるのに、どんな時間をかけているのか知らないが、会社に寝泊りまでする。昼はカップラーメン。分厚い本を何冊も机の上に置いて、こっくりこっくりしては、ばさばさと落す。風呂にも入らず、着替えもせず、目の下にクマまで作っている。 「もと総務部の営業一課です。部長のお土産のおすそ分け、持って来ました」 「お、沢島さん、ありがとう」  私は口実をつけて、企画部に様子を見にいった。  入ってすぐ、部署全体が活気に溢れ、仕事に熱中している風が感じられた。  ぐう・・・ぬうう・・・・。  あんな奴なのに、何、この、仕事で活気にあふれた感。  あいつが入ったら、気運もやる気も、下がらねばならないのに。 「ねえ、伊藤さん、大丈夫?根、詰め過ぎじゃない?」  ドジでそそっかしくて、あまりに一生懸命すぎるので、周りも心配し出した。 「うん、大丈夫。私、一生懸命頑張るしか能がないから、頑張るしかないの」  本当に、あの女の言う通り、ドジで失敗ばかりだから、一生懸命頑張るしかない。それをあの偽善者は有言実行している。 「伊藤さん、コーヒーどう?」 「伊藤さん、出来てる?どう、進み具合、お、頑張ってるねえ、皆応援しているよ」  あいつは一生懸命頑張る己って言う演出をし、周りの同情を引く。それがまた見事に皆、引っかかってしまった。 「伊藤さんがいつも頑張って、ニコニコしてくれるから、うちの部も張り合いが出るよ」 「ありがとうございます。私、頑張ります」  ぐうう・・・・うぬうう・・・  あやつはあの天真爛漫な無垢な笑みで、結局、一生懸命さを発揮し、企画書を作り上げてしまった。  なんてこと。あいつの作ったものなんて、地獄の鬼のスープと同じよ。
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