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「どうやらあの二人、結婚するって言ってる」
「えー、伊藤エリカと竹内涼?やっぱりね」
「でも、まだ入ってすぐだから、辞めるのが迷惑をかけるって言っていて、竹内涼は辞めるけど、伊藤エリカはまだ残るとか言ってる」
それからしばらくして、社内で噂が広がり始めた。
いつでもいっしょにいられる?
結婚して、会社を辞める?
(何なの、あいつら。人の目の前で、勝手なことを言ってやりたい放題して、さらにやってくれるってわけ?)
どこまで、あの後の私の記憶に、塗り重ねて来るのよ。
デートの日、私もおめかしして、竹内の行く場に行って、あの二人の邪魔をしたこともある。
「お前とは約束してねえ、ついて来るな」
竹内涼はわざとしだれかかる私を突き放して、そう言われて私は突っ立つしかなくそのまま、あの二人はどこかいっしょに行く約束で、町の中に消えて行ったのを見送った。
また、このような契機が来るとは・・・
(結婚するとは、ここで待ったが百年目)
この沢島小夜子。パーフェクトで激美貌の持ち主。おまけに超金持ち。その私の前で、永遠にいっしょの結婚だのが、成立すると思って?よくも、いけしゃあしゃあと言えたものだわ。
ゴールイン、とは上等。
二人でどこかに消える?あの女は一生あの竹内涼とラブラブな時間を手に入れ、あの男は事業を起こして一国一城の主になって自由を手にする?
そんなことが許されると思って?この私の目の前で。
元祖、ジャー島が目の前にいるってこと、お忘れよ。
この私の前で、好きにできると思ってるの?
ナッシング、エブリシング、ナッシング。
結婚を阻止するには。あの二人を別れさせるには。あの男があの女を嫌いになるには。あの男が会社独立なんてしないようにするには。
ええと、あの女を遠ざけて、あの女に別の男を作るの。あの男の弱味を握って、あの女を別れさせるようにする。会社なんて、起こさせない。
あの人は、この会社で、一生、私といっしょに・・・
(何のためにするの?そんなこと)
またするの?高校の時と同じみたいに、また、私・・・
今は私は、あの頃の沢島じゃない。
仕事もバリバリ、上司や同僚からの信頼も得て、仲間がいる。
お邪魔虫の私を応援すると言ってくれる人もいる。
私、何がしたいの?
竹内涼、あの男だけに愛されただけで、私は本当に、報われるの?
高校の時は、あの時はすべて、あの人に愛されることがすべてだった。
でも・・・
仲間も・・・女王バチとの戦いも勝って、奇跡を起こしたこの私を、あの男は満足させられる・・・・?
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