act9-3 お礼のKISS

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「どうやらあの二人、結婚するって言ってる」 「えー、伊藤エリカと竹内涼?やっぱりね」 「でも、まだ入ってすぐだから、辞めるのが迷惑をかけるって言っていて、竹内涼は辞めるけど、伊藤エリカはまだ残るとか言ってる」  それからしばらくして、社内で噂が広がり始めた。  いつでもいっしょにいられる?  結婚して、会社を辞める? (何なの、あいつら。人の目の前で、勝手なことを言ってやりたい放題して、さらにやってくれるってわけ?)  どこまで、あの後の私の記憶に、塗り重ねて来るのよ。  デートの日、私もおめかしして、竹内の行く場に行って、あの二人の邪魔をしたこともある。 「お前とは約束してねえ、ついて来るな」  竹内涼はわざとしだれかかる私を突き放して、そう言われて私は突っ立つしかなくそのまま、あの二人はどこかいっしょに行く約束で、町の中に消えて行ったのを見送った。  また、このような契機が来るとは・・・ (結婚するとは、ここで待ったが百年目)  この沢島小夜子。パーフェクトで激美貌の持ち主。おまけに超金持ち。その私の前で、永遠にいっしょの結婚だのが、成立すると思って?よくも、いけしゃあしゃあと言えたものだわ。  ゴールイン、とは上等。  二人でどこかに消える?あの女は一生あの竹内涼とラブラブな時間を手に入れ、あの男は事業を起こして一国一城の主になって自由を手にする?  そんなことが許されると思って?この私の目の前で。  元祖、ジャー島が目の前にいるってこと、お忘れよ。  この私の前で、好きにできると思ってるの?  ナッシング、エブリシング、ナッシング。  結婚を阻止するには。あの二人を別れさせるには。あの男があの女を嫌いになるには。あの男が会社独立なんてしないようにするには。  ええと、あの女を遠ざけて、あの女に別の男を作るの。あの男の弱味を握って、あの女を別れさせるようにする。会社なんて、起こさせない。  あの人は、この会社で、一生、私といっしょに・・・ (何のためにするの?そんなこと)  またするの?高校の時と同じみたいに、また、私・・・  今は私は、あの頃の沢島じゃない。  仕事もバリバリ、上司や同僚からの信頼も得て、仲間がいる。  お邪魔虫の私を応援すると言ってくれる人もいる。  私、何がしたいの?  竹内涼、あの男だけに愛されただけで、私は本当に、報われるの?  高校の時は、あの時はすべて、あの人に愛されることがすべてだった。  でも・・・  仲間も・・・女王バチとの戦いも勝って、奇跡を起こしたこの私を、あの男は満足させられる・・・・?
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