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act10 アイドル女子とアイドル男子の結婚を邪魔しに・・・行かない
「えー、本日、竹内涼君が辞めることにしました」
その日、営業部署ではささやかながら、お別れパーティが開かれた。
伊藤エリカも退職予定だが、まだしばらくは残るらしい。でも、落ち着いたら、結婚して、二人して仲良く暮らす。マイホームも買って暮らすらしい。もう、何を聞いても驚かないわ。
「いろいろお世話になりました。短い間でしたが、ありがとうございました」
竹内涼はそう言って、会社最後の日を迎え、花束をもらって、玄関まで降りて行った。
思わず、追いかけて行く。なぜか、足が向いた。
なんでかしら?獲物が逃げるのを追いかけるオオカミの本能かしら?
犬って逃げると追いかける本能があるって言うわ。意味はないのよ、エサが目の前にあると、勝手に走り出すの。逃げたら追うのよ、とりあえず。
「君は脇役じゃない。君には君の人生がある」
その私を、背後から誰かが止めた。
振り返ると、階下の壁に持たれて、こちらを伺う城市がいた。
「君を応援する人がいる。君だけを応援する人がいる。それでも行くのか、あいつの元へ?」
優しくて大人しくて、影が薄くて目立たないくせに、やけに今日は迫真の気迫漂う存在感を出している。
「私だって・・・ヒロインだもの。アイドルになりたかった。大好きな人の、学園一のアイドルに、ヒロインになりたかった」
「君は僕のアイドルだ。僕ならヒロインは君だ」
そう・・・私は。
この人の、ヒロイン。
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