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「早く、僕のところへおいでよ。ほら、僕のところへ、来るんだろ?」
私は顔を赤らめて、それでやっぱり、城市のもとへ走った。
悔しかったけど、喜んで走った。
「私なんて、邪魔島なのよ?それでも良いの?」
「それがいい。その君が良いんだから。沢島さん。僕は・・・君なしでは生きていけない」
城市は私の肩に手を回して、引き寄せる。私は彼の広い腕の中に包まれる。
「僕に取って、君はプリンセス。あいつのようにのけ者にしない。どこまでも世界の中心だ、僕の世界の中心は君」
「何を言い出すか分からないわよ?分かって?私は沢島小夜子。望みは遥かに高いの」
「僕には君が必要なんだ、僕は君を離さない」
「あなた、出世しないと、この私が満足しないかも、そう思ったことある?」
「君がそう言うなら、僕も高みを目指す。君は、将来の社長夫人ってことで」
私は顔を赤らめながら、うなづく。
もう、誰がヒロインかなんて気にしない。
私が私の人生のヒロイン。
私を愛する人のところで、私は人を愛せる人になりたい。
誰かに勝って、いい気分になんてなれないもの。
自分が幸せになってこそ、幸せがある。
もう、あの人の元へは行かない。二度と行かない。
ああ、これが、本物のヒロインの私なのね。
(終)
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