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act2-3 捨て犬を拾う?
きゅうううん。
私だって強くない。誰かを倒したって、喜びもない。
どこ?子犬が泣いてる。
雨の中、私はどこかで泣いている犬を探した。それは私だったかもしれない。
木の根元で、雨に打たれて、冷たくて、悲しくて・・
どこ?子犬ちゃん。
「風邪を引くよ、おいで」
手を伸ばすと、その子犬は私の手を取り、立ち上がった。
大きな・・・子犬だこと。人間かもしれない、でも、あまりにショックが大きすぎて、私の目には何も映らなかった。
悪党女の最後を見たせいだ。目が雨で塗れているのか、涙なのか・・・
「今日はありがとう」
優しい低い良い響きの声。
「いいのよ、飼い主はいるの?」
「飼い主?いるかいないかと言われたら、まあ、一応、家がある」
「なら、良かった。はやく、帰りなさいよ。そんなに濡れちゃ、風邪ひくわ。あんまり自分を冷たい風にさらしちゃ駄目よ」
「君がね」
そのとき私はそっと、温かな上着をかけられた。でも、それが誰のものなのか、分らなかった。
私はそのままどうやって家に帰ったのか、覚えてない。
超豪邸の部屋にいつのまにか帰っていて、朝起きて、すぐ出勤の用意をしたから、昨日の雨の中でのことなど、忘れていた。
上着も、爺やが片付けたから、そんなものがあるってのも知らなかった。
再び、朝日が昇り、私の戦いの日々が幕を開ける。
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