act2-3 捨て犬を拾う?

1/1

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ

act2-3 捨て犬を拾う?

   きゅうううん。  私だって強くない。誰かを倒したって、喜びもない。  どこ?子犬が泣いてる。  雨の中、私はどこかで泣いている犬を探した。それは私だったかもしれない。  木の根元で、雨に打たれて、冷たくて、悲しくて・・  どこ?子犬ちゃん。 「風邪を引くよ、おいで」   手を伸ばすと、その子犬は私の手を取り、立ち上がった。  大きな・・・子犬だこと。人間かもしれない、でも、あまりにショックが大きすぎて、私の目には何も映らなかった。  悪党女の最後を見たせいだ。目が雨で塗れているのか、涙なのか・・・ 「今日はありがとう」  優しい低い良い響きの声。 「いいのよ、飼い主はいるの?」 「飼い主?いるかいないかと言われたら、まあ、一応、家がある」 「なら、良かった。はやく、帰りなさいよ。そんなに濡れちゃ、風邪ひくわ。あんまり自分を冷たい風にさらしちゃ駄目よ」 「君がね」  そのとき私はそっと、温かな上着をかけられた。でも、それが誰のものなのか、分らなかった。  私はそのままどうやって家に帰ったのか、覚えてない。  超豪邸の部屋にいつのまにか帰っていて、朝起きて、すぐ出勤の用意をしたから、昨日の雨の中でのことなど、忘れていた。  上着も、爺やが片付けたから、そんなものがあるってのも知らなかった。  再び、朝日が昇り、私の戦いの日々が幕を開ける。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加