11人が本棚に入れています
本棚に追加
2019年3月1日
高校卒業後に付き合って、今日で1年。
記念日デートの計画を1か月前から考えていた。
幸い予定が無かったので、東京駅で午後7時に集合することになった。
緊張から、何度も駅の鏡で自身の姿を確認する。
着慣れない服に袖を通し、美容室でセットして貰った髪をいじる。
そうこうしている間に、彼女からラインが入った。
どうやらもう着いたようだ。辺りを見回して、人ごみの中に彼女を探す。
「だーれだ!」
可愛らしい声と供に、後ろから覆われる視界。彼女だ。
「京華だろ?」
「何でわかっちゃうのよ」
振り向くと、そこには膨れっ面の彼女。
そもそも、君としか待ち合わせしてないのだから、君以外が来るはずがない。
というセリフは言わないでおこう。
手を繋いで目的地へ向かっていると、あることに気が付く。
「…足、どうした?」
スカートから覗く白い太腿に、大きな絆創膏が貼られている。
遠目から見ても痛々しい程、目立っていた。
「朝起きたら痣ができてて…痛くないんだけど、お母さんが大袈裟でさぁ」
どうやら自覚は無いらしい。
実際彼女はよく怪我をする。転んだりぶつけたりは日常茶飯事だ。
でも、これほどの大きな怪我は見たことがない。
「…とか言って、本当はまた転んだんだろ?」
からかうように言うと、違うし!と背中を叩かれる。
「そんなこと言うんだったら、もう帰ろうかなぁ~?」
「え!ご、ごめん。冗談だから、帰らないで…」
さっきまでの勢いが嘘のように急降下する。
萎れた僕を見て、また笑う彼女。
「嘘だよ。本当に私のこと好きだねぇ」
春の日差しのように生温いこの日々が、一生続けばいいと、
そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!