2020年3月1日

1/1
前へ
/10ページ
次へ

2020年3月1日

付き合って2年記念日。 最近は忙しくて、デートのプランを考える余裕が無かった。 彼女も忙しいのか、「会いたい」と言う回数が減った気がする。 だから今日、俺は重大なことを彼女に伝えようと思う。 電話で彼女を呼び出し、夜桜が咲き誇る公園で待つ。 なんとなく、二年前の緊張感に似たものを感じた。 「ごめん、待った?」 小走りで駆けつけてくれた彼女に、僕は首を振った。 「全然。座って」 隣に腰かけると、久しぶりの彼女の匂いに癒される。 「今日、2年記念日だろ?」 「そうだね」 「最近忙しくて、あんまり会えなかったじゃん」 「うん」 「それでさ、、同棲しない?」 流れに身を任せて口にした。 横目で彼女を見ると、酷く驚いた表情をしていた。 「次引っ越す家がちょっと広いから、京華も暮らせるし、  一緒にいれば怪我から守ってやれる。」 ドジだから俺が守ってやりたい。今日会って、更にその思いが強くなった。 明らかに怪我が増えているのだ。気がかりなのは、傷が治っていないこと。 この1年で5回ほどデートをしたが、その時に貼っていた絆創膏が、 未だに剥がれていない。 「…痛い?」 膝に貼られた大きな絆創膏に触れると、 「やめてっ!!」 強く手をはたかれる。 京華の叫び声を初めて聞いた俺は、目を見開いて固まった。 嫌な沈黙が流れる。 「…あ、ごめん!その、びっくりしちゃって」 そう言う彼女の目に、恐怖の色が混じっている。 今まで、急に手を繋いでも嬉しそうにしていたから、違和感があった。 「京華?」 「見た目ほど酷くないの。大丈夫!」 すぐにいつもの笑顔に戻るが、線を引かれたような気がした。 俺が何か言おうとうする前に、彼女が口を開く。 「それにしても、酷いクマだね。仕事忙しいの?」 柔らかい手が俺の目元に触れる。 「…うん。」 「そっか」 彼女が俺の胸に手を当てて、目を閉じる。 「…なにしてんの」 「疲れが取れるおまじないだよ」 そう言うと、心なしか体が楽になっていく。 俺は目を閉じて、自分が帰る家に彼女が待っている、 夢のような現実に期待を膨らませた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加