14人が本棚に入れています
本棚に追加
「初めまして、ですね。何にします?」
「あ、」
女の子にしては低めの声、
でもすごく優しげで癒された。
俺は返事の代わりに、
すぐに咳が出る体質のためにしていた
マスクをゆっくり外した。
「オススメ、何がありますか」
次の瞬間。
店員は口の中で呟き、細かく震え出した。
「嘘」
「えっ」
「その香り」
「あ、はい?」
無意識に舐めていたラズベリーキャンディを
歯で噛み潰した。
油くさい店内の半径50センチに漂う、
甘い香り。
「すみません」
店員は顔を真っ赤にすると、
素早く奥へ引っ込んでしまった。
入れ替わりに先程の年配の女性店員が
俺の対応を始め、何事もなく注文できたが。
俺は食事が終わるまで
厨房の奥からの視線を感じることになる。
最初のコメントを投稿しよう!