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これは、コメディのような実話である。
家から、歩いて三十秒の所に、一軒のうどん屋がある。
静かな住宅街の中に、ぽつんとある。
住宅を改装した小さな店である。
この、うどん屋、はっきり言って、やる気がない。
昼間の11時から2時半までしか、していない。
なおかつ、理由もなく、よく休む。
火曜日は定休日なので、もちろんだが、いきなり、「今日は休みます」と、張り紙をして、休む。
きっと、定年退職したおやじが、趣味でうどんを作って、家を店にして、ちょっとやってみました感、満載である。
このおやじを、ちらっと見たことがあるが、眼鏡を掛けた、小柄な痩せた、気の弱そうなおやじだった。
しかし。
この、やる気のないうどん屋、、、うどんはもちろん、ちょっと置いてあるおにぎりまで、めちゃくちゃ旨いのである。
短時間しかしていないのに、評判を呼び、店には、いつも行列が出来ている。
そして、県外からも、お客が来るようになり、挙げ句の果てに、あのミシュランの日本版に載ってしまったのだ。
きっと、やる気のなかったおやじは、焦ったことだろう。
「ワシ、ただ、趣味だったのに、、」
おやじの焦りが、目に見えるようだった。
私は、家が近いので、まだ混まない開店直後に行くことが多いが、忙しそうな、厨房の様子を見ながら、いつも思う。
おやじ、、旨いうどんを作るアンタが、悪いのだ。
観念して、うどん屋業に、専念するのだな、と。
おわり
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