逃げる兎を狩る方法

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離婚してすぐに会社のあれこれと手続きをしないといけなかったのだが、離婚をしてすぐに香織の胃にデッカいポリープが見つかり手術する事になった。 基本的には日帰り手術で終わる所が、出来た場所が悪く小さな個人病院では無理となり大きな病院に転院しての手術となった。 まぁ、気付かぬうちにストレスとは溜まるもので、今の時代ストレスで死ぬ事もあるんですよ。なんて真面目な顔で医師に言われた日には我慢するのもほどほどにしないとな。 なんて思いつつ病院での日々を過ごした。 会社は早く復帰しろなんて言う事もなく、体力戻ってからでいいという事だったし有給もアホみたいに溜まっていたので、有り難く甘えていたら半年近くのんびりしてからの復帰となった。 システム課は2人1組で組んで仕事を組み立てるのが主で香織の相方である人物が、1人でもいやたぶん香織がいない方が仕事は早いんじゃないか?というくらい出来る人なので、復帰も焦らずに済んだというわけだ。 その人物こそ、今まさに香織の目の前に顔があり、香織を両腕で壁に囲うように立ち尽くしている男。 神子氏 渉(かみこし わたる) 舌を噛みそうな名前だが、顔はすこぶるサラリとしていて会社の女性陣からは王子様と呼ばれている。 そう呼ばれているが中身は違う。 ストイックという言葉を知っているだろうか? どんなに忙しく目が回るような業務量であったとしても、基本定時。残業は19時までを彼は徹底している。 という事はコンビである香織もそれを余儀なくされピアノを弾いているかのごとくキーボードを間違いなくタイピングする事も習得したほどだ。 冷たい眼差しで、お前出来るよな?とヒシヒシと隣の席のから漂うオーラは悪魔のようで、日々ビクビクしつつかつガムシャラに働いてきた結果のポリープなのかもしれない。 いや、やっぱり曽田との生活だろうな。 神子氏は厳しいが、無理難題を押し付ける事はしない。基本見守りながら壁を越えさせるタイプだ。だから、つい頑張って期待に応えたくなるのだがそれってアンタMなんじゃない?と同期の立花には白い目で見られた。 そんな基本は俺様な神子氏も、香織が入院した病名をどこかから聞いたのか「仕事は気にせず限界まで休め」と連絡をくれ、何だかんだ優しい奴だよな。と改めて彼の不器用さを微笑ましく感じていたのだ。
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