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つまり、神子氏は私の事が好きって事?
あれからキスをされたのが神子氏のマンションだと気づき、ヘロヘロになった体を抱き抱えられて広いソファーに座らされた。
香織の問いかけに対する彼の答えは意外なものだった。なんでも、入社式で香織に一目惚れをした神子氏は営業に配属予定だったところを、どこに手を回したのか無理やり香織と同じシステム課に変更させ、さらにペアにまで漕ぎつけた。
さぁ、距離を詰めて手に入れようと狙っていたのに、アッサリとどこぞの馬の骨と結婚してしまい自分の爪の甘さにかなり後悔したらしい。
え?
でも、そんな感じ全くしなかったが。
「好きな奴ほど虐めたくなるんだよ」そう吐き捨てるように顔を赤らめて言う彼を何故か可愛いな。と香織は思ってしまい思わず微笑む。
「へぇ。えらい余裕あるな。ここ俺のテリトリーだけど逃げるきるつもり?」
あ、そうだ。
これは所謂、籠の中の鳥ってやつかな。
でも、きっと神子氏は香織が本気で嫌がる事はしない。何故かそれだけは確信できた。
「神子氏、私まだ神子氏の事好きかどうか分かんないの。だから、ちょっとだけ時間欲しい」
先程からずっと自分に向けられている視線を逸らす事なく香織は正直な気持ちを伝えた。
腕を組み、指先で自分の腕をトントンと叩く彼の姿に、あ、今めっちゃ考えてる。と香織は思った。
仕事の時に悩む時や決断を迫られた際に彼が必ずやる仕草だ。
「一つ確認していい?」
「うん?」
「俺とキスしたの嫌だったか?」
嫌だったか?いやむしろもっとしたいと思うほど気持ち良かったな。と思い出し顔が赤くなる。
「いい。分かった。じゃあ、猶予は1週間。3日たったら何%か教えて。それからまた戦略練るから」
「え?短くない?3日後0%だったらどうすんの?」
「俺が今までやり遂げなかった案件なんてあったか?」
そう言って神子氏はニヤリと笑う。
確かにないですね。
1週間後の自分がまたこのマンションに来ている未来が薄っすら想像でき、でもそんな未来に少しも嫌な気持ちにならない自分に、もう限りなく100%に近いんじゃなかろうかと本当の意味で白旗を上げた香織だった。
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