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再会
加奈は男性が来るのに気づいた。
あそこに誰か座っている?男性の方かしら?
優一も女性が来るのに気づいた。
誰かこっちに来る。
「あれ」
「え」
「加奈さんじゃない」
「優一さん、どうしてここに?」
「はい。いろいろありまして……」
「そうなんだね」
「優一さんは?」
「僕はこの海に思い出があって時々来るよ」
「そうなんですね」
「とりあえず隣に座って。加奈さん」
「優一さん。砂浜の方に座ってみませんか?」
「スカートが汚れるよ。大丈夫です」
そして、二人は砂浜に座った。
「ところでいろいろあったというのは、何があったの?」
「私の家は実は瀬波財閥です」
「え、あの有名な?」
「はい」
「僕は、この間も言ったけど母子家庭で育ち、生活保護を貰って生活していたよ。君とは遠い存在なのかな」
「いえ、違います。そのようなことは関係ありません。同じ一人の人間ではないですか?」
「そうだね、加奈さんの言うとおりだね……とりあえず海を見ようか」
「はい。海の音がきれい」
「心が落ち着くよね」
「本当です」
「だんだん、薄暗くなってくるね」
「はい」
「ほら月がうっすらとでてきた」
「静かですね。何か話して下さい。優一さん」
「そうだね」
「でも加奈さんがいると緊張するよ」
「そうですか?」
「加奈さんは?」
「さっきから胸がどきどきしています」
「そうなんだ?」
「はい」
「私の家庭は裕福です。メイドも3人いまして、シェフもテレビにでるほどの有名な方です。優一さん。シェフの料理とわかめうどんはどちらが、美味しいと思いますか?」
「それはそのシェフの料理が美味しいに決まっているよ」
「いえ、違います。はいつも料理を一人で寂しく食べていますが、今日はお昼に運転手と食べました。運転手とたわいもない話をして楽しかったです。食事は家族みんなで食べるのが、一番幸せです」
「そうなんだね、さびしいね。僕の家は夜勤以外は母と食べているから、幸せなのかもしれない」
「きっとそうですよ……」
「もう月が照らしてきたね。さっきはうっすらだったけど、今、加奈さんは
はっきり見えるよ。加奈さん、きれいだね」
「いえ、そんなことはありません……」
「優一さんも優しくて素敵です」
「じゃあさ、あっち向いてほいをしようか?」
「え、どうしてですか?」
「いいから、いいから」
「じゃんけんポイ、あっちむいてホイ」
「私が勝ちました」
「ああ、負けちゃったよ。もう一回しよう」
「はい」
「じゃんけいポイ、あっちむいてホイ」
「今度も私が勝ちました」
「また、負けた、じゃあ、もう一回だけ、今度は左右だけ首を動かしてね」
「どうしてですか??」
「いいから、いい」
「じゃあ、じゃんけんポイ、あっちむいてホイ」
「ほら、ほっぺにキスしたよ」
「もう、怒ります」
「どうして?」
「私はボーイフレンドさえいません。こういう体験は初めてです」
「でも、それはおかしいよ。初めて会ったときに、恋人になってくれたよね
あれは嘘だったの?」
「いえ……」
「じゃあ聞くよ。恋人同士は頬にキスしたらダメなの?」
「それは……」
「駄目なの?答て」
「いいと思います……」
「じゃあ、浜辺を歩こうか」
「はい」
「キスしたから手をつないでいいよね?」
「いえ駄目です、恥ずかしいです……」
「じゃあ、僕から」
「冷たいかな?でも手をつないだら、少しずつ温かくなるよ」
「はい」
「じゃあ、加奈さん僕の胸を押さえてみて」
「はい」
「温かい、それとも冷たい?どっちかな?」
「温かいです……」
「じゃあ、僕の番だよ」
「駄目です」
「いいから」
「はい……」
「ほら、加奈さんの胸も温かいよ。心臓の音も聞こえてくるよ」
「もう、恥ずかしいです……」
「ほら、本当の恋人同士になったよね。嫌だったら帰るよ」
「嫌です、もう少しそばにいてください。」
「あ、運転手が迎えにきました。残念です。今日はありがとうございました」
「じゃあね」
行ってしまった……今日みたいにまた会えるといいな。
でも海の色もきれいだったけど、それ以上にきれいだったな……
照らす月は僕だけを置いていくのか……
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