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ふれあい
優一は肝心な時に大事な事を忘れる癖があった。
しまったな、また連絡先を聞いていなかった。そうか大学の校門で会えるか
来た
「加奈さん」
「優一さん」
「あの時に連絡先を交換してなくてさ。ここじゃないかと思っていたよ。連絡先を教えるから、今度からここに連絡をして」
「はい」
「家に連絡しても差し支えないから、加奈さんの家の電話番号も教えて」
「私の家は父が厳しくて、電話は難しいと思います」
「わかった。今日は時間があいていない」
「大丈夫です」
「じゃあどこか行こうか?」
「はい、行きたいです」
「どこに行きたい?」
「お酒を飲みに行ったことがなくて、居酒屋に行ってみたいです」
「じゃあ僕がよく行く居酒屋とバーに行ってみようか?加奈さんはどういうものが食べたい」
「私はフランス料理が好きです」
「う~ん……このあたりにフランス料理がある居酒屋はないな……」
「優一さんにおまかせいたしますので、楽しみです」
(ぼくは、加奈さんといつも過ごしていた公園に来ているよ)
「ここがその店だよ。中に入ろうか」
「はい」
「加奈さんは何を飲むかな?」
「私はわからないので、優一さんが選んでください」
「とりあえず生を飲もうか?」
「生って何ですか?」
「ビールのことだよ。加奈さんビール飲める?」
「お酒は全く飲んだことはありません、それに門限もあります。9時までに帰らないといけないです。そのくらい父が厳しくて」
「そうか……じゃあ、今から2時間だね」
「ここで1時間、バーで1時間かな。加奈さんちょうどいいかも。お酒を飲むのは初めてだからね。とりあえず生を二つお願いします。乾杯しようか」
「はい」
「乾杯」
「ドキドキします」
「どう、飲んでみて?」
「苦いです。すみません、砂糖やハチミツはないですか?」
「お客さん、どうぞ?」
「え、何をするの?」
「ビールに混ぜます」
「ビールに砂糖に砂糖はいれないよ」
ハハハハ
「そうなんですか?やっぱり苦いです……」
「最初は苦いよ。それからだんだん慣れてくるから」
「そうなんですね」
「うん」
(どうしてこのような思いをしないといけないんだ)
「じゃあ、ビールもきたし、何か食べよう」
「居酒屋でお勧めのものはありますか?」
「そうだね、串焼きかな?」
「はい、それでお願いします。優一さんが食べるものなら、何でもいいです」
「すみません、串の盛り合わせをください。」
「ほら、来たよ。レバー、ねぎま、いろいろあるよ。これがビールに合うんだ」
「そうなんですね」
「加奈さん、美味しいかな?」
「はい」
「後は何を食べる?」
「優一さんひとつお願いがあります。鍋料理が食べたいです。以前お話しましたとおり、父と母が仲が悪くて、鍋料理を食べた記憶がありません。鍋料理といえば家族全員で食べる印象がありますよね。母に鍋料理を作ってもらって父と一緒に食べたかったです……優一さん、今日だけ家族になっていただけませんか?」
「もちろん、僕でよければ、ちゃんこ鍋にしよう。さっそく食べようか」
「はい」
「僕は最後のおじやが好きなんだ」
「美味しそうですね」
「どうして、泣いているの?」
「嬉しくて……」
「そうか、よほど、寂しかったんだね」
「はい」
「加奈さんは得意な料理は何?」
「今は秘密です」
「ええ、何それ?」
「将来、私の夢が叶えば教えてあげます。こんなに楽しく食べたのは
初めてです」
「今度はバーに行こうか?」
「はい」
「ちょうど9時だ急がないとな。ここだよ」
「お洒落ですね」
「ここはビリヤードにダーツがあるんだ」
「でも、あと1時間か……できるかな?」
「父に帰宅を10時までお願いしてみます」
「加奈さん大丈夫?」
「あとで、父の肩を揉んであげます。父は私に甘いから、すぐ許してくれます
でも10時が精一杯です……」
「2時間か加奈さんが、どれだけお酒が強いかにもよるな?僕は強いから大丈夫だけど」
「優一さんは何を飲まれるのですか?」
「僕はブランデーのロックかな……」
「強いお酒なのですか?」
「そうだよ……あとで少し飲んでみる?」
「はい」
「加奈さんは何を飲む?」
「私は甘いお酒がいいです」
「じゃあ、カクテルかな?」
「マスター、ウイスキーのロックとオレンジ系の甘いカクテルをお願いします」
「乾杯」
「美味しいかな?」
「お酒みたいな味がします」
「それはお酒だからだよ」
ハハハハ
「そうですね。でも、すぐ酔ってしまいそう。ポワーンとします。これが酔っていることなのかもしれないですね」
「そうだね」
「そういえば、ブランデーのロックを飲んでみる?」
「はい、飲んでみたいです」
「じゃあ、ほら」
「辛くて飲めないです……」
「そうだろう」
「優一さんそんなに飲まれて大丈夫ですか?」
「ああ……」
「じゃあ、ビリヤードしよう
「優一さん足元がふらついていますよ。大丈夫ですか?」
「ああ……大丈夫だよ……」
「ビリヤードのルールはね、4隅に穴があるよね。あそこに、真ん中の玉の集まりをたたいて、穴に入れるんだ。どれだけ多く入れるかが勝負みたいだよ」
「そうなんですね……」
「じゃあ、やってみるよ」
「あれ、玉に当たらなかった……じゃあもう一回、あれ……」
「大丈夫ですか?やっぱり、優一さん、足元がふらついていますよ……」
「大丈夫だよ……」
「じゃあ次はダーツね……ダーツは円盤みたいなのがあるよね?あの円盤の中心に当てればいいみたいだよ。それでこうやって野球の玉を投げるように
振りかぶって投げるんだ……」
(なぜ、僕と君は結ばれないのか)
「そうなんですね……」
「じゃあ、僕から、あれ、的に当たらなかった……もう一回……あれ、おかしいな?」
「私もやってみたいです……」
「あ、真ん中に、え、すごい……そんなに軽くに投げて……」
「もう一回やってみます……」
「また真ん中に……すごい」
「優一さん危ないです。倒れそうですよ……10時前だし帰りましょう」
「わかった」
「優一さん、優一さん、大丈夫ですか……?」
「うん、眠くなって……」
「タクシーを呼びますから、ちょっと待っていてください」
「宮田さん、私の友達が酔っているみたいなの、バーに迎えに来てください」
「お嬢様、お父様にわかったら、大変な事になりますよ」
「だから宮田さんにお願いしたの……早く迎えに来て、お願いね」
「わかりました。急いで行きます」
「2階のソファに寝ていらっしゃて、マスターにもお手伝いをお願いしています。2人で車に乗せてください……」
「優一さん自宅はどちらですか……?優一さんしっかりしてください」
(加奈さんは一生懸命がんばっていた。僕も頑張ったつもりだよ)
あ、運転手さん、そこを右にわたって……1キロほど行ったところにあります。古くて小さい家です」
「お客様、こちらですか?」
「はい、そうです……」
「宮田さん後は大丈夫ですから、車に乗ってらっしゃて下さい」
「優一さん着きましたよ。優一さん、優一さん……」
「ああ、どうしたの……?」
「ほっぺにキスしましたよ。この間のお返しです……」
(あなたのように、お金でなんでも支配するような方ではありません。あなたこそドブネズミです)
「え、やった酔いが覚めた」
「1回だけですよ」
「うん」
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