蝶への想い

1/1
前へ
/20ページ
次へ

蝶への想い

交際が始まってしばらくの時が流れた。 「優一さん、昨日は食事をいただきまして、ありがとうございました」 「いや、田舎家停の日替わり弁当だったけど、そういって言ってもらえてうれしいよ」 「美味しかったです。優一さん。ペールデパートの最上階で蝶の展示会があるみたいなのですが、観に行ってみませんか」 「いいね、行こう」 「はい」 「わあ、世界の蝶はこんなにも種類があるのですね」 「本当だね」 「優一さん見て。可愛い。あんなに寄り添って花にとまって恋人同士みたいですね」 「本当だね」 「本当、可愛い。あれ、突然、動かなくなりましたね」 「そうだね、きっと休んでいるところさ」 「そうだといいですけど……」 「うん、そうだよ」 「あっちの蝶も可愛いですよ」 「可愛いね」 「はい」 「加奈さん、あの蝶たちは恋人同士かな?」 「そうですね。きっと恋人同士の蝶ですよ」 「僕たちはいつまでも恋人同士なのかな?どうして黙っているの……」 「いえ……」 「交際して2年目だね。雪から雪へ僕達はいるね。外は今も寒い。もう、受け取ってくれるよね」 「はい……でも……」 「父が絶対に反対すると思います……」 「どうして?」 「経済力や学歴に偏見を持っているのです……だから、受け取ってもお返しすることになると思います……」 「それじゃいつまで経っても結婚できないじゃないか」 「ごめんなさい」 「いや、僕が必ず説得するから、信じて。どうして、黙っているの?まだ、あの雪のままだろ、僕達はあの蝶になれないのか?」 「帰ります、ごめんなさい……」 「加奈さん……」  数日後が経過して、加奈から電話がかかってこなくなった。しばらくして、二人は会った。 「加奈さん、どうして、最近は電話をしてくれないの?」 「優一さん、ごめんなさい。やはり結婚はできません。父がやはり……」 「僕がなんとかするよ」 「はい……」 「でも、父が絶対に反対すると思います、前にも言ったように、経済力や学歴に偏見を持っているのです。だから、受け取ってもお返しすることになると思います。ごめんなさい」 「いや、僕が必ず説得するから、待っていて」 「はい……」 「必ず、二人はあの蝶になれるよ。二人の花はいつか咲く日が来るよ」 「はい」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加