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蝶への想い
交際が始まってしばらくの時が流れた。
「優一さん、昨日は食事をいただきまして、ありがとうございました」
「いや、田舎家停の日替わり弁当だったけど、そういって言ってもらえてうれしいよ」
「美味しかったです。優一さん。ペールデパートの最上階で蝶の展示会があるみたいなのですが、観に行ってみませんか」
「いいね、行こう」
「はい」
「わあ、世界の蝶はこんなにも種類があるのですね」
「本当だね」
「優一さん見て。可愛い。あんなに寄り添って花にとまって恋人同士みたいですね」
「本当だね」
「本当、可愛い。あれ、突然、動かなくなりましたね」
「そうだね、きっと休んでいるところさ」
「そうだといいですけど……」
「うん、そうだよ」
「あっちの蝶も可愛いですよ」
「可愛いね」
「はい」
「加奈さん、あの蝶たちは恋人同士かな?」
「そうですね。きっと恋人同士の蝶ですよ」
「僕たちはいつまでも恋人同士なのかな?どうして黙っているの……」
「いえ……」
「交際して2年目だね。雪から雪へ僕達はいるね。外は今も寒い。もう、受け取ってくれるよね」
「はい……でも……」
「父が絶対に反対すると思います……」
「どうして?」
「経済力や学歴に偏見を持っているのです……だから、受け取ってもお返しすることになると思います……」
「それじゃいつまで経っても結婚できないじゃないか」
「ごめんなさい」
「いや、僕が必ず説得するから、信じて。どうして、黙っているの?まだ、あの雪のままだろ、僕達はあの蝶になれないのか?」
「帰ります、ごめんなさい……」
「加奈さん……」
数日後が経過して、加奈から電話がかかってこなくなった。しばらくして、二人は会った。
「加奈さん、どうして、最近は電話をしてくれないの?」
「優一さん、ごめんなさい。やはり結婚はできません。父がやはり……」
「僕がなんとかするよ」
「はい……」
「でも、父が絶対に反対すると思います、前にも言ったように、経済力や学歴に偏見を持っているのです。だから、受け取ってもお返しすることになると思います。ごめんなさい」
「いや、僕が必ず説得するから、待っていて」
「はい……」
「必ず、二人はあの蝶になれるよ。二人の花はいつか咲く日が来るよ」
「はい」
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