お父様

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お父様

 加奈は父親から結婚の許しを事前に得たくて、父親に相談する事にした。 コン コン コン 「誰だ?」 「私です」 「ああ、加奈か、入りなさい」 「はい」 「どうした、突然?」 「お父様、前もって話しておきたいことがあります」 「話とは何だ?」 「私は結婚したい人がいるのです」 「なに?誰ととの結婚の話か?」 「村田優一さんという方です」 「どこの大学を卒業しているのか?」 「いえ、高校卒業です」 「ふざけたことをいうな。駄目、駄目、駄目。金は持っているんだろうな?」 「いえ、小さい工場で働いていますから、さほど持ってはいません」 「駄目だ話にならない」 「お父様、お願いします」 「駄目だ、駄目だ、駄目だ」 「ううう……」 その後、加奈は優一と会った。 「優一さん、やはり無理です。父に話しても、相手にもしてくません‥…」 「僕がなんとかしよう」 「無理です。優一さんが恥をかくだけです」 「大丈夫だよ。明日、行ってお願いするから、お父さんへそう伝えていて」 「はい……」  翌日になり、優一は初めて加奈の家へ行くことになった。 「ここが私の家です」 「すごいね……こんなに大きい家は見たことがないよ」 「大きくて見た目が立派なだけです。中にはいろいろな絵画や骨とう品など芸術品などあります。照明も鮮やかで綺麗ですが温かみはありません。それが私の家なのです」 「そうなんだね。大丈夫だよ」 「そうだといいのですが、優一さんが辛い思いをするだけです……」 「いや、大丈夫だよ」 加奈の家にはメイドがいた。 「あら、お嬢様、お帰りなさいませ。今日はお友達とご一緒ですか?」 「そうです。お父様はいらっしゃいますよね?」 「はい、ご主人様は書斎にいらっしゃいます」 「わかりました」 コンコン 「失礼します、お父様、紹介します。この方が村田優一さんです」 「ああ、娘から聞いたよ。小さな工場で働いている、金のない男だな」 「お父様、失礼です。そのような言い方はやめてください」 「何が失礼だ。あれからな調べたが、君は母子家庭で生活保護をもらいながら育ったそうだな。仕事も小さな工場で働いているそうだ。瀬波財閥と釣り合わないんだよ。加奈が地獄に落ちるのは目に見えている。そんな奴に娘を渡すわけにはいかん」 「確かにお父様がおっしゃられるように、我が家は決して裕福ではありませんが幸せです。しかも、今は生活保護を受けずに生活しています。また、結婚しましたら母とは別に二人だけで生活しますので、どうか結婚を認めていただけないでしょうか?お願いします」 「実はな加奈、お前にはすでに婚約者がいるんだ。国会議員の若手議員の北川原光明先生だ」 「え、お父様、どうして」 「優一か、お前と格が違うんだ。所詮、結婚をして幸せになれるかどうかは お金次第なんだよ」 「お父様ひどい」 「駄目だ。ただちに加奈と別れてくれ。お金をいくらかやるから、いくらほしい?いくらでもやるぞ・100万か?そのくらいでお前は十分だろう、それだけの男なんだよ」 「いえ、お金ではありません。僕には加奈さんがそばにいてくれれば十分です どうかお願いします。幸せな家庭もつくります。結婚を許して下さい」 「お前は金が無いだけではなく嘘つきだな。早く出ていきたまえ。二度とここに来るな」 「お父様、ひどいです。私は優一さんを愛しています」 「駄目だ、駄目だ。この男では話にならない」 「わかりました。失礼いたします」  優一は悲しく書斎から立ち去ろうとした。 「優一さん、待ってください。なんとか父を説得しますから」 「いや、駄目だ、駄目だ。何度同じことを言わすのか。加奈、この男とは別れなさい」 「加奈さん、覚悟はして行ったけど、ここまでとは思っていなかったよ。お父様の言うとおりかもしれない。もう別れよう……」 「嫌です、嫌です、いやです、そのような悲しいことを言わないでください」 「仕方ないじゃないか……」 「いやです」 「加奈さん、ごめんね……」 「別れないでください、ううう……」 「それでは、お父様、これで失礼いたします」 「おい、佐代子。この優一という男に100万やれ」 「わかりました」 「いえ、お断りいたします」 「優一さん、待って」 「それじゃ」 「ああ、お前のような金のない男は二度と来るな」  そして、優一は加奈の家から去った。 「お父様、どうしてあのようなひどいことを、おっしゃるのですか」 「事実だからだよ」 「私はお父様が決めた婚約者とは、絶対に結婚いたしません。お母様、なんとかおっしゃって下さい」 「好きにしなさい」 わあああ 「じゃあ、私はここで死にます」 「いや、それは駄目だ。お父さんが考え直すから」 「あなた、加奈はどうせ死ぬことはできないから、ほら、じゃあここで死んでみなさい。包丁を持ってくるから、これで胸をさしてごらん?どうしたの?どうせできないんだから」 ううう、わあああ 「早く歯磨きして寝なさい」 「お母さま……」
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