今日も地球の人口は知らないうちに減っている

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     数日後の朝。  いつものように寝室で目覚めた老婆は、壁に立てかけてある姿見の前で、背筋をシャンと伸ばして……。 「鏡よ、鏡。教えておくれ。地球の人口は、今どれくらいだい?」  無機物であるはずの姿見に対して、優しい声で問いかけていた。 『現在の地球の人口は、80億4963万7957人です』  少年みたいに軽やかな男性の声で、姿見が老婆に答える。  老婆の寝室に置かれているのは普通の姿見ではなく、正真正銘の『魔法の鏡』だったのだ。 「ふむ。それでは、次の質問だ。鏡よ、教えておくれ。この24時間で、新たに生まれてきた人数は……」  机の上に帳面を広げて、鏡の言葉として出てきた数字をメモしながら、老婆は質問を重ねていく。  これが彼女の、毎朝の日課だった。  毎日全く同じ時刻に世界の人口を記録すると同時に、前日のチェックからの24時間以内に生まれてきた数と、死んだ数も鏡に答えさせる。  生まれてきた数から死んだ数をマイナスすれば、それが一日の増加人数になるはず。今日の人口の総数から前日のそれをマイナスしたものと、同じ(あたい)になるはず。  ところが、実際には一致しない場合も出てくるわけで……。  例えば今日も、一人分だけ数が合わない。「死んだ」とはカウントされずに、消えた人間が一人いる計算になっていた。    
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