今日も地球の人口は知らないうちに減っている

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    「ごめんください」  入り口のベルがカランと鳴ると同時に、来客の挨拶が店内に響く。  ベージュ色の外套を着た、二十代(なか)ばくらいの女性だった。  わざわざ声をかけながら入ってくるほどだから、ウィンドウショッピングの(たぐ)いなどではなく、何か目的の品があって、それを買うために来たのだろう。  そう判断したからなのか、あるいは特に意識せずとも同じなのか。店の奥から店主が出てきた。 「はい、いらっしゃい……」  カウンター越しに来客の相手をするのは、しわがれた声の老婆だった。  身に纏っているのはフード付きの黒ローブで、外国の映画に出てくる修道士とか、漫画やアニメの魔法使いを思わせるような格好だ。  その怪しげな雰囲気に(ひる)んだのか、客の女性は一歩、思わず後退(あとずさ)りしてしまう。  しかしすぐに、自分の気持ちを抑えるみたいに、逆に前のめりな姿勢になると、毅然とした声で老婆に尋ねるのだった。 「こちらで魔法のポーションを扱っている、と聞いて参りました。(つら)い失恋を完全に忘れられる薬だそうですが……。そんなもの、本当にあるのですか?」    
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