夏の終わりのオレンジ

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中1の時、公園の夏祭りの後に同級生十数人で自然に集まって花火をする事になった。その中に小学生の時から好きで、中学が別になってしまった藤原君もいた。あまり話をした事は無かったのに『久しぶり』って声をかけてくれた。 『久しぶり』って返してそれっきり。それでも一緒に花火をして、みんなで写真を撮って嬉しかった。 中2の時も同じ様に集まって河原に行った。藤原君が芝生で滑った私を支えてくれて、そのまま暫く手を繋いでいてくれた。『大丈夫?』『ありがとう』そう言って手を離してそれぞれの友達の所に行った。 の思い出を噛み締めながら、鮮やかに咲く数々の花火ごしに藤原君を見つめていた。煙が目に染みるなぁ…なんて言いながら、少しだけ泣いた。 内向きに丸く輪になって、みんなで線香花火対決をした。 オレンジの火球から火花が弾け、少しずつ勢いを増していく。右隣3人目の藤原君の顔がぼんやりと照らされていた。数人が火球を落とし騒ぐ中、少しずつ火花が弱くなっていく。私の花火は結局最後まで燃え尽きる事なく、ほんの一瞬の油断で火球を落として終わった。 片付けを終え、みんなで写真を撮った。『また来年ね‼︎』『またな』『じゃあな』それぞれがそれぞれの別れの言葉を口にして帰って行く。私は黙ったまま、自転車に乗る藤原君の後ろ姿を見送った。 『バイバイ』 聞こえるわけもないのに、お別れを言った。 中3の時…私はもうここにはいないって、分かっていたから。
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