夏の終わりのオレンジ

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 公園の真ん中には(やぐら)が建っていて、変わらず夏祭りがやっていた。  始まったばかりの屋台に、小学生数人が楽しそうに笑いながら列を作る。  あの頃の自分たちの姿が重なって見えて、私もつられて少し笑った。  せっかく来たんだし…そう思って、小学校にも行ってみる事にした。  公園からは歩いて10分ちょっと。  当時、自宅から26分かけて通った通学路。  用水路が無くなって、クネクネしていた道は真っ直ぐになっていた。  大好きだったれんげ畑が潰されていて、四棟の狭小3階建が無理矢理立ち並んでいた。  何これ…間違いだらけの間違い探しみたい。  門の外から見た無機質なコンクリートの塊は6年間も通っていたのが嘘みたいに疎遠に感じ、なぜだか少し切なくなった。  来た道を戻り、今度は河原に行ってみた。  入口には花火禁止の看板が立てられていて、また少し切なくなった。  あの日藤原君と手を繋いで上がった土手の向こうには、大半が砂利で埋まり形を変えられた川が流れていた。  ぬるい風の中、私はただ黙ってその景色を見つめていた。  もうあの頃とは違う。  あの頃には戻れない。  思い出はこうやって、どんどんなくなっていくんだ…。
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