夏の終わりのオレンジ

7/13
前へ
/13ページ
次へ
 かすかに盆踊りの曲が聴こえ始めた。  なくしたものばかりを目に焼き付けて、寂しさを連れて駅に向かう。  少しずつ盆踊りの音が遠ざかって行く。  祭りに向かう溌剌(はつらつ)とした笑い声とすれ違う私は、もうあの頃の私ではない。  橋をとぼとぼと歩きながら、眩しい光の方に目を向けた。  暗くなり始めた空一面に広がるオレンジ色の雲が、とても綺麗だった。  言葉にならない寂しさに、ただ切なくて… 訳も分からず泣きたくなった。  もう、ここへ来る事は二度とないだろう… そう思った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加