1 えっ?嫁げとおっしゃるんですか?

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1 えっ?嫁げとおっしゃるんですか?

 「シエル悪いがオーナンド国に嫁いでくれ」  シエルはいきなり悪夢を見ているのかと思う。  「お父様、今何と?」  「お前がもう嫁ぐ気がないことは重々承知している。だが、これは国王からの命令だと思ってくれ」  訳の分からないまま倒れそうになる。  慌ててシエルの身体に手を伸ばす気配がした。  その身体をそっと支える手は、一緒に国王の執務室に呼ばれた騎士団内の諜報部に所属するボルクだった。  彼とは10歳の頃からの知り合いでいわゆる幼なじみのような仲だった。ただし彼は5歳年上だが。  ボルクはウィスコンティン男爵家の次男で、15歳から騎士団に所属していた。 元々騎士を目指していたボルクの身体能力は素晴らしく18歳になるころには騎士隊長にまで上り詰めていた。  おまけに元騎士団統轄の治安府にいた父は先に女の子が生まれたせいか、父の警護に就いた彼をことのほか気に入り、以来の屋敷にしょっちゅう出入りすることが多かった。  父のそばには、諜報部の仕事で王城を離れていない時はしょっちゅうボルクがいることが多い。  だから今日もこうして彼がそばにいるのだろう。
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