こけし

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私は、母がいないときに、こっそりと作りかけのこけしを見てみた。 顔は完成していた。 その顔は……私にそっくりだった!! 恐怖のあまり、全身の血が凍ったように思えた。 私は……消される…… * * * * その夜、いつも以上に怯えながら布団に入っていた。 「あんたなんて産まなきゃよかった」 「あんたさえいなければ私はもっと……」 「あんたなんて消えてしまえ!」 これまでに母に言われてきた罵声が脳内に蘇ってくる。 「あんたなんて産まなきゃよかった」 「あんたさえいなければ私はもっと……」 「あんたなんて消えてしまえ!」 その母の声はだんだんと大きくなり、私の頭の中いっぱいに響き渡る。 「あんたなんて消えてしまえ! あんたなんて消えてしまえ! 消えてしまえ! 消えてしまえ! 消えてしまえ!」 やめて…… もう許して…… ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………… 布団の中で必死につぶやき続けた。 だめだ…… 怖い……怖い……怖い……怖い…… 消される……消される……消される……消される…… その時、居間の方から 「できた」 とつぶやく声が聞こえた。 完成したらしい。 カシャッという音も聞こえてきた。 作品を撮影したのだろう。 こけしを作っている間は殺されない。 しかし、今、こけしは完成した。 これから私は消されてしまう! こんなところで寝ていたら危ない。 私は居間に飛び出した。 母は携帯電話をいじっていた。 おもむろに顔を上げ、私を見た。 また怒鳴りつけるのだろうか。私は身構える。 しかし、母が見せた表情は意外だった。 ニヤリ 母は微笑んだ。 そんな顔、今まで見たこともなかった。 いつも見せていた表情は仏頂面か、あるいは鬼のような顔か、そのどちらかだった。 笑う母の顔はとても怖かった。 机の上には完成したばかりのこけしが置かれている。 こけしと目が合う。 私とそっくりな顔のこけし…… そのこけしが、私を見て ニヤリ と笑った…… この瞬間、私の精神は崩壊した。 台所に走り、包丁を見つけて手に取ると、それを持って母へと突進した。 ! ! ! ! これが、私が母を消した理由。 私は警察に捕まった。
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