こけし

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女子少年院では勉学に励んだ。 伝統工芸である「こけし」についても、図書室で本を借りて調べてみた。 こけしに、子を消すなんて意味はなかった。 子消しの話は、怪談が好きな友人の作り話だった。 こけしは江戸時代から作られてきているが、もともとはこけしという名前ではなくて、「きぼっこ」「きでこ」など呼ばれていたらしい。 だから、「子消し」という意味で発祥したものではなかった。 「こけし」という名前になったのは昭和時代になってからのこと。 芥子(けし)の実に形が似ているからなど、由来には諸説あるようだ。 それを、私は自分が消されるのだと勘違いしてしまい、母を殺してしまったのだった。 少年院では木材加工の技術を習得し、作業に真剣に取り組んだ。 私には、出所してからの夢があった。 その夢に向かって作業を頑張り続けた。 少年院を出た私は、希望していた木工所に就職した。 こけしを作る工場だ。 工場長さんはとても理解のある人で、訳ありの私なのに、他の労働者と平等に扱ってくれた。 こけしの作り方を習得した私は、今は張り切って仕事に取り組む毎日を過ごしている。
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