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お盆休みをもらった。
嫌な思い出ばかりの実家だったけど、なぜか自然と足が向いた。
それが私には不思議だった。
私は、仏壇に供えてあるこけしと母の遺影に手を合わせた。
そのとき、私の周りで風が吹いたような気がした。
窓は開けていないのに。
母もお盆だから帰ってきたのかもしれない。
「お母さん、おかえりなさい。そして、ごめんなさい……」
母が作ったこけしを見つめる。
こけしは無表情。
けれど、心なしか微笑んでいるようにも見えた。
「私も作ったんだよ、こけし」
持参したこけしを、母が作ったこけしの横に供えた。
並んだこけしは親子のように見えた。
こんな親子になりたかったな……
「これからも頑張るからね」
私はもう一度、仏壇に手を合わせた。
< 了 >
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