こけし

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私はいつも母から冷たい扱いを受けていた。 我が家は母子家庭で、父は離婚してどこかに行ってしまっていた。 私も家を出たかったが、行く場所がなかった。 生き延びることだけを考え、耐えていた。 「あんたなんて産まなきゃよかった」 母から何度言われたことか。 母は再婚しようと、いろいろな男性と交際していた。 しかし、子持ちということで始めから相手にされないことも多かったようだ。 私がいるせいで再婚できない、そのようなことを何度も言われた。 「あんたさえいなければ、私はもっと……」 じゃあ、私はどうしたらいいの? いてはいけないということ? 中には、母と仲良くなり、家に上がり込むようになった男性もいた。 私が学校から帰ると、見知らぬ男性が家にいた。 怖いし、気持ち悪い。 この男性が母とどんなことをしているのか、考えるだけでも吐き気がした。 そういう態度は伝わってしまうもの。 連れ子と仲良くなれないみたいだから、と母は交際を打ち切られることもあった。 当然、怒りの矛先は私に向かう。 「あんたさえいなければ……」 私がいてもいなくても、母の性格では長くお付き合いするのは難しいのでは? とも思ったが、そんなことは絶対に口に出せない。 「あんたなんて産まなきゃよかった」 そんなことを私に言われても…… もっと愛想よくしなさいとも言われた。 知らない男性に愛想よくしないといけないの? 不器用な私には無理だった。 私は自分に正直過ぎた。 嫌なものは嫌だった。 * * * 母がまた別の男性を連れてきた。 やはり、私は愛想よくすることはできなかった。 ところが、その男性の方は私と仲良くなろうと必死になっていた。 でも、申し訳ないけど、生理的に無理。 私のご機嫌を取ろうと、かわいいとか変に褒めてくるのも嫌だった。 ある日、母がいなくて、その男性と二人きりになったことがあった。 私はその男性に襲われそうになった。 必死で抵抗し、私はその場にあったものをつかんで殴りつけた。 その男性は怪我をした。 怪我の件は母の知るところとなり、私はその男性の前に連れ出された。 そして、母は私の顔を殴ってこう言った。 「怪我をさせるなんてとんでもない子ね! ほら、土下座して謝りなさい!」 私が何をされそうになったのか、母は知っているのだろうか。 ここで本当のことを言ったところで、さらに殴られるだけだろう。 私は土下座をさせられ、無理やり謝罪させられた。 そして、いつものようにこう言われた。 「あんたなんて産まなきゃよかった」 「あんたさえいなければ私はもっと……」 「あんたなんて消えてしまえ!」 こんな日々を過ごしていた。
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