こけし

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ある日の夜中。 目を覚ました私は、居間で母が何かを作っているのを目撃した。 母はどこから借りてきたのか、ろくろのような機械で木を削っていた。 何を作っているのだろう。 声をかけることはできなかった。 どんな罵声が返ってくるか、それを想像しただけで、もう声を出すことができなくなる。 母に下手に話しかけると痛い目に遭う。 それは、身に沁みて分かっていたことだった。 余計なことは聞かない、話しかけない。それに限る。 二十四時間、私は母の機嫌が悪くならないことを祈りつつ過ごしていた。
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