こけし

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数日経つと、ろくろを回す音は聞こえなくなったが、母はまだ何かの作業をしているようだった。 毎晩毎晩、こんな遅い時間に何を作っているのか気になった。 見つからないよう、こっそり覗いてみた。 母はまるで取り憑かれているかのように、一心不乱に作っていた。 円柱状の木をカンナで削ったり、ヤスリをかけたり…… その姿は狂気そのものだった。 母が削っているものが見えた。 こけしだ。 母はこけしを作っていた。 趣味で作っているのだろうか。 それとも、仕事なのだろうか。 聞きたくても私には聞けなかった。 藪をつついて蛇を出すようなまねはできなかった。
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