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母のこけし作りは続いた。
仕事も交際相手もコロコロ変わるくせに、こけし作りだけは飽きずに続いていた。
ついには塗料まで調達して、顔を描き始めた。
* * * *
私は学校で、別の友達にこけしの話をしてみた。
すると、こんな言葉が返ってきた。
「こけし? なんか怖いよな」
私と同意見の人がいるとは。
「こけしってさぁ、なんかホラーじゃん」
私は気になった。
「ホラー? どうして?」
「だってさ、こけしって、子供を消すって意味なんじゃないの?」
「そうなの?!」
「こんな話、聞いたことないか? 昔、口減らしのために子供の間引きが行われていたんだよ。でさ、やっぱ子供を殺すのって罪悪感あるじゃん? で、こけしを作ってから殺すんだよ。子供の魂をこけしに移すって名目でさ。ま、結局は人殺しの罪悪感を少しでも減らすための儀式なんだろうけど」
私の頭から血が引いていった。
「こけしって、手も足もないじゃん。親に殺された子供が仕返しをしてこないように、こけしには手も足もないんだよ」
手も足もない……
だから親に逆らえない……
* * * *
思えば、こけしを作り始めてからは、母は私にきつく当たらなくなっていた。
痛い思いをしないで済むのはよかったけど、母の様子がいつもと違うというのは、それはそれでなんだか怖かった。
しかし、今、答えが分かった気がした。
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