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魔王信長
「信長様、ご無沙汰しております」
前田利家がスッと信長の前に出た。
「おう、又左ではないか。何をしに参ったのだ」
「はっ、此度の戦いに参加させて頂きたく馳せ参じました」
信長はまだ利家の事を許していないのか、「好きにしろ」とだけ言うとそっぽを向いた。
「その者達は何者だ?見かけない格好をしているが」
美怜はカリスマから声を掛けられて「うわ」と焦った。
「この二人は先程知り合った旅芸人です」
「ふむ......名前は何と申すのだ」
「はい、枝豆と空豆です」
勝手にデタラメな名前を教える利家。暫く思案した信長。
「では我らに付いて参れ」
「いえ、あの。僕達は戦った事が無いです。えっと、多分役に立たないですから」
焦りまくる翔也。ところが、
「おお、信長様も気付かれましたか。俺も彼等が適任だと思っていました」
態度をコロッと変える利家。
「えー、さっきは砦で待ってろって言ってた.....」
美怜の口を利家が咄嗟に塞いだ。そのまま信長はクルリと馬の向きを変えると、他の家臣達の所へ去って行った。
「ちょっと、なんでアタシ達も付いて行く事になるのよ!」
猛抗議する美怜だが、利家は飄々としている。
「信長様はお前達が他の国の忍者ではないかと疑っているのさ。忍者はよく旅芸人に扮するからな。その変な服も他の国の人間と思われたのだろう。一緒に付いて行くと言わなければ、信長様に斬り殺されたかも知れないぞ」
「えー」
「皆の者、行くぞ!」
信長の大声が響き、家臣達が一斉に動き始めた。仕方なく二人も利家の後に付いて行く。
「利家さん、今川軍がいつ襲って来るか解らないから、もし襲って来た時には守って下さいよ~」
泣きそうな顔で懇願する翔也。
「いや、大丈夫だろ。義元達が何処にいるかもう解っているし」
「へっ?」
「今川軍は桶狭間山の頂上に陣取っているぞ。砦から今川軍の旗が沢山見えたからな」
「ねえ、もう少しゆっくり歩いて欲しいんだけど」
すっかり息があがっている美怜。
「シオンもタイムマシンに残して来たし、荷物も持って無いんだから我慢しろよ」
「昔の人達ってよくこんな山道をスタスタ歩けるよね」
「そりゃあ、キミ達の時代とは身体の鍛え方が違うんだろうな」
「そう言う翔也も何か平気な顔してるわよね」
「そりゃあ、大学時代はマラソン選手だったからな。こんな山道もトレーニングでよく走ったんだよ」
「へ~」
その時、急に空が曇ったかと思うと、バババッと音を立てて雹が降って来た。
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