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新入社員の野々村勝也が佐伯優吾常務の専属秘書に大抜擢されてから三ヶ月が過ぎた。
就任早々の頃は常務の意図する行動と要求がうまく理解できず「ぼくがやるからもういいよ」と何度も言われ、落ち込む事が多かったが、最近は常務の行動パターンが読めるようになってきたので、先回りをして動く事もできるようになった。
『野々村くん、ちょっと来て』
デスク上のインターホンから常務の声。野々村は 『今、うかがいます』と答え、アラビア語、仏語、中国語へ同時翻訳中のプレゼン資料を保存すると立ち上がり、隣の常務室へ。失礼しますと声をかけて扉を開ける。
野々村の上司はこちらに背をむけ、デスクによりかかり、スマホを持ったまま窓の外を見ていた。外には夕暮れ時の美しい東京の夜景が広がる。
「常務、何か御用でしょうか」
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