あなたがいればそれでいい

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 小さい頃は独占欲が強い子どもだった。  だった、というのは、両親からの指摘で直してきたつもりだからだ。独占欲が強い人というのは、やはりどうしても嫌われる。そんな人に育ってほしくないと私の将来を案じた両親の指導 は、きっと間違ってはいない。 「――なんてことを昨日思い出してさ」 「どうしたの、急に」  昼休み。いつもの中庭。相も変わらず魔法科の友達と一緒に食べるお弁当。  たまには陰陽科のクラスで食べようかとも思うのだが、事前に「今日はそれぞれのクラスで食べよう」と言っておかないと無意味に待たせてしまうことになる。そのうえ、最近は陰陽科のクラスメイトとあまり話さないものだから、誰と一緒に食べればいいのかもわからなくなってきていた。それならば、特に気の遣わない友達と一緒に食べた方がご飯もおいしい。  とはいえ、だ。 「いや、うーん、なんていうか、ほら、私はいいんだけどさ」 「?」  友達の顔を覗き込む。相手はなんの話かわからないというように怪訝そうな顔をした。 「いま私、××を独占してないかなぁ……なんて」  そう、私は別にいいのだ。私の意志がここにいるのだから。  けれど、相手はどうだろう。本当は魔法科の友達と一緒にお昼を食べたいのではないだろうか。
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