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問われた相手はといえば、そんな言葉は想定外だったようだ。
「え、別にそんなことはないけど」
「そう? なんか、クラスの友達とごはん食べる約束とかしてない? 大丈夫?」
「え、どうしたの急に」
顔いっぱいに困惑が広がっていく。それを誤魔化すかのように彼女は笑った。
「どうしたの、クラスでいじめられた?」
「そういうのはないよ、みんないい人」
仲が良い、とは敢えて言わなかった。ここ最近の、自分の存在が浮いている感じを自覚しているから。
それに彼女は「ふーん」と納得したようなしていないような、そんな曖昧な反応を見せる。だから「本当に」と加えるように言った。
「本当に、私は問題ないんだけどさ。ほら、科も違うのにずーっとふたりでしかお昼食べてないから」
「私も別に構わないんだけど……」
別に魔法科と陰陽科で仲が悪いとか、そういう話はない。クラスメイトでも、普通科の方でお昼を取る子だっている。私たちの関係だけが特別なわけじゃない。
「……ほら、早く食べないとまた時間ギリギリになるよ」
「ぅえ!? ほんとだ!」
おしゃべりに夢中になりすぎて時間を忘れるのはいつものこと。
言われて初めて時計を確認した私は、慌ててお弁当を掻き込む。それを横で眺める彼女が笑う。
――別に今さら遅刻したところで、誰も気にしないと思うけど。
そう内心で思ったことは、秘密にしておいた。
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