あなたがいればそれでいい

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「昨日の話、なんだけどさ」 「ん?」  昼休み。いつもの中庭。ふたり並んで食べるお弁当。  今日の彼女の弁当はサンドイッチで、しかもフルーツサンドなどという豪華なものを食べている。横取りしたいところだが、盗む部分がないので諦めた。 「昨日の話って?」 「独占云々って話」 「あー」  昨日の今日でもう忘れていたのだろうか、或いはあまり考えないようにしていたのだろうか。 「逆に聞くけど、そっちこそどうなの? 前は『陰陽科で食べる~』って言ってたこともあった気がするけど」 「ああ、うん……」  入学してすぐの頃は、よく一緒にいた。少し経つと、彼女は陰陽科でも友達を作るようになった。一緒に過ごさない時間も増えた。  そして最近になって、またふたりでいる時間が増えた。私は嬉しい。  言い淀む彼女の横顔に、「どうしたの?」と心配する。 「ええっと、うーん、そんな大したことじゃないんだけどね」  誤魔化すように笑いながら、彼女は言った。 「陰陽科のクラスで、あまり仲の良い友達ができなくてさ」 「そう、なの?」 「あ、いじめられてるとかじゃないよ。ただ、××みたいな、気の置けない友達? っていうの? ができなくて」  やっぱ居心地の良さが全然違うんだよね。  そう苦笑する彼女に「そう……?」と不安そうにする。フリをして内心で笑った。
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