雪遊び

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 静かな病院内に、扉の開く音だけがする。俺は、自分の立てている音に気を使って、扉を開ける速度を少し下げた。 「あら、龍ちゃんじゃない」  ベッドに横になりながら窓越しに外を見ている母は、俺の方を振り向いて言った。 「母さん、体調は大丈夫?」 「全然。外が眩しすぎて目がおかしくなっちゃいそう」 「……なら見なけりゃいいんじゃない? カーテンを閉めるか、こっちを向けば外の景色を見なくて済むよ」  俺が丁寧に解決策を提示してあげると、母は不機嫌そうな表情になった。 「どこを見ても白、白、白。こんな綺麗な雪景色を見るのは今日がきっと最後だから、この目に焼き付けておかないと」 「今日が最後じゃないよ、多分」  そうは言ったが、母の癌は徐々に進行しているらしい。その場を少しでも明るくするためだけの、無責任な発言をしたことを後悔した。  それにしても、久々の雪だ。自分は、子どもの頃は雪に興奮するタイプではなかったが、その頃の雪の降った日のことは、今でもよく覚えている。        ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
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