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「龍ちゃん、中学生とか高校生だった時から、あまり私と話してくれなかったよね」
「そうだったっけ?」
母の言ったことに疑問で返したが、自分でも家庭内の口数が減っていたことはわかっていた。
「健児さんとも。でも健児さんは、龍ちゃんが話を聞いてくれなくてもお構いなしだったもんね。そこに龍ちゃんがいたら話し続けるし、一緒に遊ぼうとする。龍ちゃん、すごい鬱陶しがってたよね」
「まあ、ね」
俺は苦笑して同意する。でもあの時の俺からすれば、父は鬱陶しいなんてもんじゃなかった。父の子どもっぽさには時折腹が立ち、あのような大人にはなりたくない、とも思っていた。
「健児さんは、自分が興味を持ったことはとことんやり続ける性分でね、普段はあんな感じだけど、あの性格のおかげでゲームクリエイターという職にもありつけたし、龍ちゃんが大学生になって一人暮らしを始めた時も、沢山仕送りをすることができた」
「それは本当に感謝してるよ」
あの時は親のことがあまり好きではなかったし、大学生活でもあまり親のことを考えずにいたが、今となっては感謝しかない。
父は、俺が一人暮らしをすることに反対していた。なぜ反対するのか、俺が聞いても答えなかった。俺がちゃんと生活できるか心配だった、とか父が反対する理由を考えてみたが、あの人のことだから、俺と一緒に遊べなくなるのが嫌だった、とかそんなところだろう。
俺は、父が俺の一人暮らしに反対していた、当時のことを思い出していた。当時の、雪が降り終わって積もった日のことだ。
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