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図書館が閉館時間になった。まだ外はそれほど暗くなっていないので、大学受験を目前に控えている俺はもう少し勉強したいと思った。しかしそうは言っても閉館時間だ。俺は渋々家に帰ることにした。
「龍斗ーー! 見ろ、でっかいかまくらだぞーー!」
家の前では父さんが待ち構えていた。俺は自分の部屋に行って早く勉強をしたかったのだが、仕方なく父さんが指をさしている、庭の方向を見た。
思った以上に大きいかまくらだ。あれを一人で作るには、かなりの労力が必要になりそうだ。
「龍斗、一人暮らししたいんだろ? ならここに住めば良いじゃないか」
「いや、住まないよ!」
俺は父さんにストレートなツッコミをしてしまい少し恥ずかしくなったが、父さんはそんなことを微塵も気にしていないようだった。
そんなバカみたいなことを言っていた父さんが、ふと真面目な顔になった。
「龍斗、なんでそんなに一人暮らしがしたいんだ?」
「え? それは……」
急に質問されたから俺は思わず答えそうになってしまったが、『父さんみたいになりたくないから』とは言えない。
父さんのようにはなりたくない、もっとしっかりとした大人になりたい。最初にそう思ったのは俺が中学生だった時だろうか。それから、俺は父さんと違った行動をとるように心がけてきたのだ。だから、昔からゲームが好きで今はゲームクリエイターである父さんに対して俺はゲームを全くしない、そして結婚するまで実家暮らしだった父さんに対して俺は大学で一人暮らしをする。
そうすることで、俺は父さんみたいにはならないと信じてきたのだ。
「なんでそんなに一人暮らししたいのかはわからないが、一人暮らしに飽きたらすぐここに戻ってこいよ」
「……わかった」
多分俺が一人暮らしを始めたらここに戻ってくることはないと思うが、俺は適当に返事をして家の中に入った。
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