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「俺が家族に寄り添っていれば、母さんの癌ももっと早くに見つけることができたのかな」
俺は後悔を口にしていた。大学生の時は沢山仕送りをしてもらっていたから頻繁に連絡を取り合っていたが、社会人になってからはほとんど連絡を取っていなかった。家族と話すようになったのは、それから十年以上経った、今からほんの二年ほど前からのことである。
「これでも早く見つかった方だと思うよ。最近はよく私の体調にも気を使ってくれてたし、龍ちゃんは親孝行者だよ」
「……そうかな」
自分が親孝行者だとは思えない俺は、曖昧な返事をした。
「でも、もう一回くらい、健児さんと雪遊びしたかったなぁ」
母が外の景色を見ながら言う。
「……やっぱり、雪遊び好きだったんじゃん」
「違うわよ。別に雪遊びじゃなくてもいいけど、とにかくお父さんと遊びたかったってだけ」
「弁解しなくていいよ。恥ずかしいことじゃないし」
「だから、違うって」
そんな感じで、俺と母がくだらない言い合いをしていた時……。
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