カラスが鳴いた日のこと

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「パパ、カマクラ作るの手伝ってよ」 「え?」 「ヒマワリも手伝ってくれるかな?」 「あいっ!」 「大きなカマクラ、作ろうね!」 「カマクラってすぐ作れるもんなの?」  多分ね、と笑って倉庫に雪かきの道具を揃えに行く。  パパは力があるから『ママさんダンプ』、私はスコップ、そしてヒマワリには。 「え? これって、もしかしてママが小さい頃に使ってたやつ?」 「そう! あるかなあ? って探してみたらあったの。まだ使えそう」  倉庫の奥の壁にかかっていた赤色のソリ、小学校六年生の頃まで使っていた記憶。  まだ壊れずにあったことと、捨てないでいてくれたことが嬉しい。 「で、まずはどうしたらいい?」 「じゃあ、ここに雪を積むことから始めるよ」  スコップの先で大きな円を描く。  その中にそれぞれが集めた雪を山にして積み上げていく作業。  幸い雪なら余るほどあるのだから。 「ヒマワリも運ぶんだよ」 「うんっ」  スコップで軽くすくった雪をソリに積んであげると、嬉しそうに綱を引き、円の中に運ぶヒマワリ。  パパは、ママさんダンプで遠くから雪を集めては山を積み上げていく。  少し離れた場所からスコップに掬ったやわらかい雪を円の中めがけて投げ飛ばしながら、二人の笑い合う様子を見ていたら、込み上げてくる懐かしさに目を細めた。  ヒマワリとパパの姿があの頃の私と父さんみたいで――。
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